2000年から引き出した5つの条件
2000〜02年に消えた会社と生き残った会社を分けた条件を、今の決算で確かめられる形にした。当てはまる条件ごとに印を付ける。印が少ないほど「弾けたときに持ちこたえる体力がある」という意味で、株価が割安か、上がるかとは関係がない。
- FCF赤字自分の稼ぎで投資しているか
設備投資が営業キャッシュフローを上回る(フリーキャッシュフローが赤字)会社は、資金の出し手が引いたときに投資を続けられない。2000年の通信会社がこれだった。
- 借金が重い借金が重すぎないか
借入から手元資金を引いた純負債が、営業キャッシュフローの3年分を超える会社を「重い」とした。
- 営業赤字本業で利益が出ているか
営業赤字の会社は、売上の伸びが止まると資金が尽きるまでの時間との勝負になる(Webvan・Pets.com)。
- 設備が重い設備が重すぎないか
設備投資が売上の40%を超える会社は、数年で陳腐化するGPUを抱えるほど、需要が落ちたときの減損が大きい。
- 期待の先取り期待を先取りしすぎていないか
株価収益率(時価総額÷純利益)が60倍を超える会社。利益が出ていない会社は、株価売上高倍率(時価総額÷売上)が20倍を超えるとき。2000年の天井で Cisco は収益率で約200倍、売上高倍率で約30倍だった。倍率が高いほど、成長が少し鈍るだけで株価は大きく下がる。
物理インフラ(データセンター・電力)
2000年なら光ファイバー網・通信会社
2000年の光ファイバーにあたる層。ただし電力・土地・送電網は数十年もつうえに、すぐには増やせない。作りすぎても、後から来た人が使う資産になりやすい。危ないのは借金で建てる会社と、長期契約の相手(AI企業)の信用が揺らいだとき。
| 会社 | 何をしているか | 売上(4四半期) | 伸び | 営業利益率 | 設備投資÷営業CF | 純現金 | 株価収益率 | 株価売上高倍率 | 52週高値から | 弱点 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| VertivVRT | データセンターの電源・冷却装置 | 115億ドル | +26% | 19% | 13% | -1億ドル | 56x | 8.5x | -33% | なし |
| VistraVST | テキサス中心の発電会社。データセンター向けの電力需要を見込む | 192億ドル | +4% | 19% | 56% | -192億ドル | 21x | 2.4x | -34% | 借金が重い |
| Constellation EnergyCEG | 原子力中心の発電会社。データセンターと長期の電力契約 | 313億ドル | +26% | 15% | 93% | -188億ドル | 27x | 3.0x | -35% | 借金が重い |
半導体・ネットワーク機器
2000年なら通信機器(Cisco・Lucent・Nortel)
2000年の Cisco の席。今いちばん利益率が高い層だが、売上は顧客の設備投資そのもので、投資が止まれば売上も止まる。2000年に生き残ったつるはし売りですら株価は8〜9割下げた。顧客への出資で需要を支える動きは、Lucent・Nortel の顧客融資と同じ形をしている。
| 会社 | 何をしているか | 売上(4四半期) | 伸び | 営業利益率 | 設備投資÷営業CF | 純現金 | 株価収益率 | 株価売上高倍率 | 52週高値から | 弱点 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| NVIDIANVDA | AI用GPUの最大手。2000年のCiscoにあたる位置 | 3,030億ドル | +104% | 65% | 5% | — | 28x | 17.9x | -5% | なし |
| AMDAMD | GPU・CPU。OpenAIに自社株の新株予約権を渡して大口受注 | 413億ドル | +49% | 16% | 17% | 99億ドル | 160x | 24.9x | 0% | 期待の先取り |
| BroadcomAVGO | 巨大IT企業の自社設計チップの受託とネットワーク半導体 | 891億ドル | +56% | 48% | 3% | -354億ドル | 44x | 18.9x | -27% | なし |
| MicronMU | AI用の広帯域メモリ(HBM) | 903億ドル | +188% | 66% | 49% | 209億ドル | 24x | 13.5x | -11% | なし |
| Arista NetworksANET | データセンター内のネットワーク機器。いちばんCiscoに近い商売 | 105億ドル | +33% | 43% | — | 133億ドル | 64x | 24.7x | -2% | 期待の先取り |
クラウド・計算資源の貸し手
2000年ならデータセンター・ホスティング(Exodus など)
投資の主役。本業で稼ぐ巨大企業は、弾けても投資を減らして耐えられる(2000年の Microsoft や Oracle のように)。2000年の通信会社に近いのは、借金でGPUを買い込む新興クラウドと、稼ぎ以上に投資しているところ。
| 会社 | 何をしているか | 売上(4四半期) | 伸び | 営業利益率 | 設備投資÷営業CF | 純現金 | 株価収益率 | 株価売上高倍率 | 52週高値から | 弱点 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| MicrosoftMSFT | Azure。OpenAIの大株主 | 3,318億ドル | +18% | 47% | 63% | 365億ドル | 29x | 11.6x | -5% | なし |
| AmazonAMZN | AWS。Anthropicに出資 | 7,757億ドル | +16% | 12% | 107% | -100億ドル | 20x | 3.5x | -12% | FCF赤字 |
| AlphabetGOOGL | Google Cloud・自社チップ(TPU)・自社モデル(Gemini) | 4,459億ドル | +20% | 33% | 71% | 1,423億ドル | 17x | 9.4x | -15% | なし |
| OracleORCL | OpenAIと5年で3,000億ドル規模の計算資源契約(2025年9月に報道) | 718億ドル | +22% | 32% | 161% | -925億ドル | 22x | 5.8x | -56% | FCF赤字設備が重い |
| CoreWeaveCRWV | GPUを買い込んで貸す新興クラウド。借入で設備を調達 | 76億ドル | +115% | -3% | 298% | -193億ドル | 赤字 | 6.4x | -39% | FCF赤字営業赤字設備が重い |
サービス・アプリ
2000年ならポータル・EC(Yahoo・Amazon・Pets.com)
2000年の教訓では、最後に勝ったのはこの層だった。弾けた後に安くなった計算資源を使えるからだ。ただし勝者はまだ小さいか、非上場か、まだ生まれていないかもしれない(Google は1998年創業、Facebook は2004年)。基盤モデルの会社(OpenAI・Anthropic)は非上場で、このサイトの数字には入っていない。
| 会社 | 何をしているか | 売上(4四半期) | 伸び | 営業利益率 | 設備投資÷営業CF | 純現金 | 株価収益率 | 株価売上高倍率 | 52週高値から | 弱点 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Meta PlatformsMETA | 広告でAIを使う側。自社モデル(Llama)と巨大データセンター | 2,282億ドル | +28% | 38% | 69% | 66億ドル | 28x | 8.5x | -3% | なし |
| SalesforceCRM | 業務ソフト。AIエージェントを載せて売る側 | 439億ドル | +11% | 20% | 4% | -279億ドル | 20x | 4.4x | -12% | なし |
| ServiceNowNOW | 業務の自動化ソフト | 147億ドル | +22% | 11% | 14% | -8億ドル | 84x | 9.5x | -28% | 期待の先取り |
| AdobeADBE | 画像・動画の制作ソフト。生成AIで置き換えられる側でもある | 260億ドル | +15% | 36% | 2% | 9億ドル | 13x | 3.5x | -35% | なし |
| PalantirPLTR | データ分析・AIの導入支援 | 62億ドル | +79% | 43% | 1% | 94億ドル | 151x | 74.0x | -8% | 期待の先取り |
読み方と注意
数値はSECに出された決算の直近4四半期(決算期末は2026年5月〜2026年8月)。純現金は現金と短期の有価証券から借入を引いたもので、リース債務は借入に含めていない。株価収益率(直近4四半期の純利益)と株価売上高倍率は、最新の株価と株式数で計算した。来期の予想利益は無料で取れないので、株価収益率は実績ベース。外国企業(TSMC・ASML・日本企業)と非上場のモデル会社は入っていない。
投資の助言ではない。印は「弾けたときの耐え方」を表すもので、買うべきかどうかを示すものではない。
2026年9月28日 10:50 更新・株価は2026年9月25日まで