年表

  1. Netscape が上場。公開価格28ドルに対し初日の終値は58.25ドルで、インターネット株ブームの号砲になった。

  2. グリーンスパンFRB議長が「根拠なき熱狂(irrational exuberance)」と発言。ナスダックはここからさらに3倍以上になる。

  3. AOL が Netscape を42億ドルで買収することで合意。Netscape はその年の2月にブラウザのソースコードを公開しており、これが後の Mozilla・Firefox になる。

  4. FRBが利上げを始める。2000年5月までの6回で政策金利は4.75%から6.5%へ。

  5. この年の米国の新規上場は476件、初日の平均上昇率は71%(Jay Ritter教授の集計)。

  6. AOL と Time Warner が合併を発表。ネット企業が老舗メディアを飲み込む形だった。

  7. ナスダック総合指数が終値の最高値を付ける(5,048.62)。

  8. Cisco が Microsoft を抜いて時価総額で世界最大の会社になる(報道で5,550億〜5,690億ドル)。

  9. Pets.com が清算を発表。上場から1年足らずだった。

  10. ネットスーパーの Webvan が破綻。

  11. 海底ケーブル網を敷いた Global Crossing が破綻。

  12. WorldCom が破綻。資産1,070億ドルは当時の米国で最大の破綻で、背景には巨額の不正会計があった。

  13. ナスダック総合指数が底を打つ(1,114.11、高値から-78%)。

  14. Google が上場。崩壊の後に安くなった回線・サーバー・人材の上で育った会社だった。

  15. 通信機器の Nortel が破綻。2011年に特許約6,000件が45億ドルで Apple・Microsoft などの連合に売られた(Google は44億ドルで競り負け)。

  16. ナスダック総合が2000年の高値を回復。15.1年かかった。

  17. Cisco の株価が、2000年3月の終値の最高値をようやく上回る。25.7年ぶり。

層ごとの運命

層消えた買われた・売られた生き残った後から来て勝った
通信インフラ(光ファイバー網)Global Crossing、WorldCom(不正会計)、360networks など、借金で網を広げた会社が相次いで破綻Global Crossing の株式61.5%を2.5億ドルで ST Telemedia が取得。WorldCom(MCI)は2006年に Verizon が85億ドルで買収回線そのもの。2001年には敷かれた光ファイバーの約95%が使われていないと推計されたが、のちに動画とクラウドの時代に使われた安い回線を使ったネット企業(YouTube・Netflix の配信など)
通信機器(つるはし売り)Nortel(2009年に破綻)Lucent は Alcatel と合併し、ベル研究所ごと今は Nokia に。Sun は2010年に Oracle が74億ドルで買収し、Java が残ったCisco。ただし株価が2000年の高値に戻るまで25年以上かかった特許を買った Apple・Microsoft など
ポータル・検索Excite@Home(2001年に破綻)Lycos は2000年にスペインの Terra が125億ドルで買い、2004年に約1億ドル(買値の1%未満)で韓国の Daum に売られた。AltaVista は Overture を経て Yahoo へYahoo。ただし2017年に本体の事業を Verizon に44.8億ドルで売ったGoogle(1998年創業、2004年上場)
EC・ネットサービスPets.com、Webvan、eToys などWebvan の副社長だったダグ・ヘリントンは2005年に Amazon に入り、2007年に AmazonFresh を立ち上げた(今は Amazon の小売部門の CEO)Amazon、eBay、Priceline(現 Booking)。いずれも株価は7〜9割以上下げたFacebook(2004年)・YouTube(2005年)など、崩壊の後に生まれた会社

生き残った会社でも、これだけ下げた

高値の日安値の日高値からの下落高値を回復した日今の株価(2000年の高値比)
ナスダック総合2000年3月2002年10月-77.9%2015年4月(15.1年)+436%
ナスダック1002000年3月2002年10月-82.9%2015年11月(15.6年)+551%
フィラデルフィア半導体株指数2000年3月2002年10月-83.9%2017年11月(17.7年)+851%
Cisco2000年3月2002年10月-89.3%2025年12月(25.7年)+33%
Intel2000年8月2002年10月-82.3%2026年4月(25.6年)+64%
Qualcomm2000年1月2002年8月-86.8%2019年11月(19.8年)+125%
Oracle2000年9月2002年6月-84.2%2017年6月(16.8年)+196%
Microsoft1999年12月2000年12月-65.2%2016年10月(16.8年)+767%
Apple2000年3月2003年4月-81.8%2005年1月(4.8年)+26,393%
Amazon1999年12月2001年9月-94.4%2009年10月(9.9年)+4,580%
eBay2000年3月2000年12月-77.1%2003年12月(3.7年)+741%
Priceline(現 Booking)1999年4月2002年10月-99.3%2013年9月(14.4年)+321%
日経平均2000年4月2003年4月-63.5%2015年6月(15.2年)+219%
ソフトバンク(現 ソフトバンクグループ)2000年2月2002年11月-98.6%2021年2月(21.0年)+148%

今も上場している会社だけを載せた(破綻した Pets.com・Webvan・Global Crossing・WorldCom・Nortel などは株価がゼロになり、データに残っていない)。高値は1999〜2001年の終値の最高、安値は高値の後2003年までの終値の最低。株価は分割調整済みの終値で、配当は含まない(Yahoo Finance)。

拾った人たち

会社は消えても、技術・回線・人は消えなかった。

Nortel の特許 約6,000件

拾った人
Apple・Microsoft・BlackBerry・Ericsson・Sony の連合(Rockstar)
値段
45億ドル(2011年)

会社は潰れても、無線とネットの技術は特許として高値で残った。競り負けた Google は同じ年の8月、特許を目当てに Motorola の携帯事業の買収を発表した。

Netscape のブラウザ

拾った人
AOL(1998年)→ ソースコードは Mozilla へ
値段
42億ドル

製品としての Netscape は消えたが、公開したコードが Firefox になり、ブラウザの競争を支えた。

Global Crossing の海底ケーブル網

拾った人
ST Telemedia(シンガポール)→ 2011年に Level 3
値段
株式61.5%を2.5億ドル

数十億ドルかけて敷いた網が、破綻の後はわずかな値段で買われ、使われ続けた。インフラは作った人ではなく、安く拾った人のものになった。

Webvan の人材と失敗の記録

拾った人
Amazon
値段
—

Webvan の元幹部が Amazon で食品の配送を立ち上げた。倉庫と配送に先に巨額を投じて潰れた会社の経験が、体力のある会社の中で生きた。

Sun Microsystems

拾った人
Oracle
値段
74億ドル(2010年)

「ドットコムの . を作った会社」と自称したサーバーの雄。ハードウェアは縮んだが、Java と MySQL は Oracle の中で残った。

Lycos

拾った人
Terra(2000年)→ Daum(2004年)
値段
125億ドル → 約1億ドル

天井で買った側がいちばん損をした例。ブームの中の大型買収は、買った会社の株主の負担になる。

日本のITバブル

日本にもITバブルがあった。2000年1月にヤフーの株価が1株1億円を超え、携帯電話の販売店の光通信は下方修正をきっかけに20営業日連続でストップ安になった。ネット企業への出資で一時トヨタに次ぐ時価総額になったソフトバンクは、2000年2月の高値から98.6%下げ、高値に戻るまで21年かかった。

3つの教訓

  1. インフラを作った人ではなく、安く拾った人が勝った

    光ファイバーは作りすぎて作り手が潰れたが、回線は残り、崩壊の後に安くなった回線の上で Google や YouTube が育った。

  2. つるはし売りも無事ではなかった

    Cisco や Intel は本物の売上と利益があったが、顧客の投資が止まると株価は8〜9割下げ、2000年の高値に戻るまで25年以上かかった。

  3. 生き残った会社の条件は、借金の軽さと手元の稼ぎ

    潰れたのは借金で設備を広げた会社(通信会社)と、売上の前に資金を使い切った会社(Webvan・Pets.com)。Amazon は株価が9割以上下げても、資金が尽きる前に黒字にたどり着いた。

出典

2026年9月28日 10:50 更新・株価は2026年9月25日まで