弾けるとしたら

4つの弾け方と、その後に伸びるもの

弾け方は1通りではなく、何が打撃を受け、何がその後に伸びるかは弾け方で変わる。ここでは2000〜02年に実際に起きたことを根拠に、4つの弾け方を仮に置いた。予想ではなく備えるための見取り図で、ランプは関係する崩れのサインが今点いているかを示す。

弾け方ごとの、危ない会社と伸びそうな会社

弾け方危ない側伸びそうな側
資金が止まる関係するサイン:0/2 点灯CoreWeave・Oracle・VistraAlphabet・Microsoft・GE Vernova
投資が止まる関係するサイン:0/3 点灯NVIDIA・Micron・Arista NetworksAppLovin・Shopify・Intuit
値崩れする関係するサイン:0/2 点灯NVIDIA・CoreWeave・AMDDuolingo・Apple・Qualcomm
金利で冷える関係するサイン:0/2 点灯Palantir・Datadog・EquinixAlphabet・Microsoft・Apple

弾け方を押すと、理由と今の数字に進む。赤い数字は、借金が現金より多い・稼ぎを超える投資・赤字・売上の減少・株価の先取りのどれかに当たるところ。

シナリオ:資金が止まる

引き金 データセンターを借金で建てる会社や、稼ぎを大きく超えて計算資源を買う約束をした非上場のAI企業に、お金が回らなくなる。債券市場や出資者が一度ためらうと、約束されていた設備の注文が消える。

2000年ではハイイールド債の市場が閉じ、借金で光ファイバー網を広げた通信会社が資金を断たれた。Global Crossing(2002年1月)と WorldCom(同7月)が破綻し、顧客に融資していた Lucent は2001〜02年に35億ドルの貸し倒れを計上した。

関係する崩れのサイン(今)

▼ 危ない側

借入でGPUを買う新興クラウド(CoreWeave)、稼ぎを超えて投資している大手、AI企業との長期契約を当てにして建てる電力・データセンター、顧客に出資して需要を支える半導体メーカー。

  • CoreWeaveCRWV

    借入でGPUを買い、稼ぎの数倍を投資している。資金が止まると設備を増やせず、借金の返済だけが残る。2000年の新興通信会社にいちばん近い。

    純現金
    -193億ドル
    設備投資÷営業CF
    298%
  • OracleORCL

    稼ぎを超える投資を借入で埋めている。最大の顧客 OpenAI の資金繰りにも左右される。

    純現金
    -925億ドル
    設備投資÷営業CF
    161%
  • VistraVST

    データセンター向けの電力需要を見込む発電会社で、借金が重い。AI企業の計画が取り消されると、見込んだ需要が消える。

    純現金
    -192億ドル
    設備投資÷営業CF
    56%

▲ 伸びそうな側

2000年には、破綻した会社の網がわずかな値段で買われた(Global Crossing の株式61.5%が2.5億ドル)。今回拾われるのは、建てかけのデータセンター・電力の契約・送電網につながる権利になりそうだ。拾えるのは現金を持つ大手で、資産そのものは次の需要に使われる。

  • AlphabetGOOGL

    手元の純現金がいちばん厚く、投資も稼ぎの範囲に収まっている。安くなったデータセンター・人材・技術を拾える。

    純現金
    1,423億ドル
    設備投資÷営業CF
    71%
  • MicrosoftMSFT

    本業の稼ぎで投資を賄っている。投資を絞っても耐えられ、2000年の Oracle のように拾う側に回れる。

    純現金
    365億ドル
    設備投資÷営業CF
    63%
  • GE VernovaGEV

    送電網と発電の機器。自らは借金に頼っておらず、計画の持ち主が替わっても電力の設備は使われ続ける。

    純現金
    103億ドル
    設備投資÷営業CF
    12%

シナリオ:投資が止まる

引き金 AIの売上が投資に見合わないと大手が判断し、設備投資を減らす。GPU・メモリ・ネットワーク機器の注文が一斉に止まり、作りすぎた在庫と設備が残る。

2000年では2001年、通信会社が投資を止めると、Cisco の売上は1四半期で前の期から3割落ち込んだ。4月には22.5億ドルの在庫の評価損と8,500人の削減を発表した。

関係する崩れのサイン(今)

▼ 危ない側

半導体・ネットワーク機器(2000年の Cisco の席)。今いちばん利益率が高い層ほど、注文が止まったときの落ち方も大きい。

  • NVIDIANVDA

    売上は大手の設備投資そのもの。投資が止まれば、今の高い伸びと利益率がまとめて落ちる。2001年の Cisco の席。

    売上の伸び
    +104%
    営業利益率
    65%
    株価収益率
    29x
  • MicronMU

    メモリは値段の上下が激しい。注文が止まって在庫が余ると、値崩れが速い。今の伸びは過去の山と比べても大きい。

    売上の伸び
    +188%
    営業利益率
    66%
    株価収益率
    24x
  • Arista NetworksANET

    データセンターのネットワーク機器で、いちばん Cisco に近い商売。株価の先取りも大きい。

    売上の伸び
    +33%
    営業利益率
    43%
    株価収益率
    64x

▲ 伸びそうな側

作りすぎた計算資源は値下がりする。2000年は余った回線の値段が2〜3年で9割以上下がり、その上で Google・YouTube・Netflix の配信が育った。今回は、AIを製品に組み込む側(アプリ・業務ソフト・広告)が、安い計算資源で費用を下げ、できることを増やせる。

  • AppLovinAPP

    工場もデータセンターも持たず、AIを広告の配信先選びに使う。計算資源が安くなるほど利益が増えやすい。

    売上の伸び
    +61%
    営業利益率
    77%
    株価収益率
    23x
  • ShopifySHOP

    AIの店員や検索を、何百万もの店に広げる立場。計算資源が安くなるほど、広げる費用が下がる。

    売上の伸び
    +33%
    営業利益率
    14%
    株価収益率
    97x
  • IntuitINTU

    税務・会計の代行をAIに置き換えるほど費用が下がる。設備をほとんど持たない。

    売上の伸び
    +14%
    営業利益率
    27%
    株価収益率
    16x

シナリオ:値崩れする

引き金 少ない計算資源で同じ性能を出すモデルや技術が広がり、「GPUはいくらあっても足りない」という前提が崩れる。2025年1月27日、中国の DeepSeek のモデルをきっかけに NVIDIA の株価は1日で17%下げ、時価総額5,890億ドルが消えた。これはその予告編だったのかもしれない。

2000年では1990年代の後半、波長多重(DWDM)の技術で、1本の光ファイバーに流せる量が数十倍に増えた。敷いた網の容量が桁違いに膨らみ、回線の値段は2〜3年で9割以上下がって、回線を売る会社の多くが立ち行かなくなった。

関係する崩れのサイン(今)

▼ 危ない側

GPUを売る会社と、GPUを買い込んで貸す会社(新興クラウド)。GPUは5〜6年で償却するので、値崩れすると帳簿の上の価値も大きく減る。

  • NVIDIANVDA

    GPUの必要量の見通しが下がると、真っ先に売られる。2025年1月の DeepSeek のときは1日で17%下げた。

    株価売上高倍率
    18.2x
    株価収益率
    29x
    売上の伸び
    +104%
  • CoreWeaveCRWV

    GPUを買い込んで貸している。GPUの値下がりは、そのまま貸し出し料と資産の価値の下落になる。

    株価売上高倍率
    6.2x
    株価収益率
    赤字
    売上の伸び
    +115%
  • AMDAMD

    OpenAI 向けの大口受注と株価の期待が、GPUの需要の見通しにかかっている。株価の先取りも大きい。

    株価売上高倍率
    24.0x
    株価収益率
    154x
    売上の伸び
    +49%

▲ 伸びそうな側

値段が下がれば使う量は増える。安くなった回線がネットの動画を生んだように、安くなったAIはアプリや業務ソフトへの組み込みを広げ、スマホやPCの中でもAIを動かせるようにする。

  • DuolingoDUOL

    AIで教材を作り、会話の相手をしている。AIが安くなるほど、利用者1人あたりの費用が下がる。

    株価売上高倍率
    5.9x
    株価収益率
    16x
    売上の伸び
    +29%
  • AppleAAPL

    小さなモデルが賢くなるほど、iPhone の中でAIを動かせる。データセンターに頼らずに済む。

    株価売上高倍率
    10.6x
    株価収益率
    38x
    売上の伸び
    +17%
  • QualcommQCOM

    スマホやPCでAIを動かすチップ。端末の中のAIが広がるほど出番が増える。

    株価売上高倍率
    4.5x
    株価収益率
    21x
    売上の伸び
    +4%

シナリオ:金利で冷える

引き金 データセンターの電力や部材の値上がり、景気の過熱でインフレが戻り、FRBが利上げに転じる。先の利益を今の値段に割り引く金利が上がると、期待を先取りしている株ほど下がる。

2000年ではFRBは1999年6月から2000年5月までに政策金利を1.75pt引き上げ、ナスダックはその途中の2000年3月に天井を付けた。崩れた後、FRBは2001年だけで11回利下げし、6.5%から1.75%まで下げた。

関係する崩れのサイン(今)

▼ 危ない側

株価収益率が高い会社(「生き残りの条件」の「期待の先取り」の印)と、借金で設備を広げる会社。

  • PalantirPLTR

    株価収益率も株価売上高倍率も、このサイトの会社でいちばん高い部類。金利が上がると、先の利益の今の値打ちが大きく縮む。

    株価収益率
    149x
    株価売上高倍率
    73.2x
    営業利益率
    43%
  • DatadogDDOG

    利益がまだ薄く、株価の大半が将来の利益への期待。

    株価収益率
    561x
    株価売上高倍率
    25.1x
    営業利益率
    0%
  • EquinixEQIX

    借金の多い不動産(REIT)。金利が上がると借り換えの費用が重くなる。

    株価収益率
    65x
    株価売上高倍率
    10.2x
    営業利益率
    22%

▲ 伸びそうな側

2000年の後、利益と現金のある会社は株価が下がっても次の手を打てた。Apple は不況のさなかの2001年10月に iPod を出し、2003年の iTunes Store、2007年の iPhone へとつなげた。今回なら、端末を持つ会社と、現金の厚い大手。

  • AlphabetGOOGL

    利益に比べて株価が高すぎず、現金も厚い。値下がりした会社や人材を拾える。

    株価収益率
    17x
    株価売上高倍率
    9.4x
    営業利益率
    33%
  • MicrosoftMSFT

    本業の稼ぎが大きく、借金に頼らない。金利が上がっても投資を続けられる。

    株価収益率
    28x
    株価売上高倍率
    11.4x
    営業利益率
    47%
  • AppleAAPL

    本業の稼ぎが大きい。2001年の不況のさなかに iPod を出したように、下げ相場でも次の製品に投資できる。

    株価収益率
    38x
    株価売上高倍率
    10.6x
    営業利益率
    33%

領域:電力・送電網・データセンターの建屋

伸びる弾け方資金が止まる

弾けても消えない資産。発電所・送電網・変電設備は数十年もち、新しく作るには何年もかかる。作りすぎても、後から来た人が使う。

2000年では光ファイバーは作りすぎて作り手を潰したが、回線は残り、10年後の動画とクラウドの時代に使われた。データセンターの Equinix は2000年8月に上場した直後に崩壊に巻き込まれ、借金の組み直しを迫られたが、生き延びて世界最大級の貸し手になった。

会社何をしているか売上(4四半期)伸び営業利益率設備投資÷営業CF純現金株価収益率株価売上高倍率52週高値から弱点
GE VernovaGEVガスタービン・送電網の機器414億ドル+13%4%12%103億ドル27x6.1x-19%なし
EatonETN配電・電源の機器300億ドル+16%11%21%-178億ドル44x5.6x-6%借金が重い
VertivVRTデータセンターの電源・冷却装置115億ドル+26%19%13%-1億ドル54x8.2x-35%なし
Constellation EnergyCEG原子力中心の発電会社313億ドル+26%15%93%-188億ドル27x3.0x-36%借金が重い
EquinixEQIXデータセンターの貸し手(REIT)。2000年に上場し、崩壊を生き延びた98億ドル+10%22%28%-176億ドル65x10.2x-9%借金が重い期待の先取り

弾けた直後は、注文の取り消しや電力の需要見通しの引き下げで、株価は大きく下げうる。伸びるのはその後。

領域:現金で拾う側

伸びる弾け方資金が止まる、投資が止まる、金利で冷える

本業で稼ぎ、手元に現金がある会社は、弾けた後に安くなった資産・人・技術を買える。

2000年ではVerizon は WorldCom の後身 MCI を85億ドルで、Oracle は Sun を74億ドルで買い、Apple・Microsoft などの連合は Nortel の特許を45億ドルで買った。

会社何をしているか売上(4四半期)伸び営業利益率設備投資÷営業CF純現金株価収益率株価売上高倍率52週高値から弱点
MicrosoftMSFTAzure。OpenAIの大株主3,318億ドル+18%47%63%365億ドル28x11.4x-6%なし
AlphabetGOOGLGoogle Cloud・自社チップ(TPU)・自社モデル(Gemini)4,459億ドル+20%33%71%1,423億ドル17x9.4x-15%なし
Meta PlatformsMETA広告でAIを使う。自社モデル(Llama)2,282億ドル+28%38%69%66億ドル27x8.0x-8%なし
AmazonAMZNAWS。Anthropicに出資7,757億ドル+16%12%107%-100億ドル20x3.4x-13%FCF赤字

今の大手は、自らが投資の主役でもある。稼ぎを超えて投資を続けていれば、拾う側ではなく、値下がりする資産を抱える側になる。表の「設備投資÷営業CF」を見てほしい。

領域:安くなったAIを使う側

伸びる弾け方投資が止まる、値崩れする

計算資源が安くなるほど、AIを製品に組み込む会社の費用が下がり、できることが増える。

2000年では崩壊で安くなった回線とサーバーの上で、Google(2004年上場)・YouTube(2005年)・Netflix の配信(2007年)が育った。作った側ではなく、使った側が次の10年の勝者になった。

会社何をしているか売上(4四半期)伸び営業利益率設備投資÷営業CF純現金株価収益率株価売上高倍率52週高値から弱点
AppLovinAPPAIで広告の配信先を選ぶ68億ドル+61%77%0%-5億ドル23x15.1x-58%なし
ShopifySHOPネット通販の店の仕組み。AIの店員・検索133億ドル+33%14%1%49億ドル97x14.1x-20%期待の先取り
DuolingoDUOL語学学習。AIで教材を作り、会話の相手をする11億ドル+29%14%5%12億ドル16x5.9x-61%なし
IntuitINTU会計・税務ソフト。AIの代行サービス214億ドル+14%27%2%-5億ドル16x3.4x-61%なし
DatadogDDOGシステムの監視。AIを動かす会社ほど使う40億ドル+32%0%4%50億ドル561x25.1x-7%期待の先取り

勝者はまだ小さいか、上場していないかもしれない(Google は1998年創業、Facebook は2004年)。ここに並べたのは今AIを製品に組み込んでいる上場企業の例で、勝者の予想ではない。

領域:端末の中のAI

伸びる弾け方値崩れする、金利で冷える

モデルが小さく安くなるほど、クラウドではなくスマホやPCの中で動かせる。データセンターを持たなくても、端末の台数で稼げる。

2000年ではApple は不況のさなかの2001年10月に iPod を出し、2003年の iTunes Store、2007年の iPhone へとつなげた。安くなった部品と回線を、端末と売り場にまとめた会社だった。

会社何をしているか売上(4四半期)伸び営業利益率設備投資÷営業CF純現金株価収益率株価売上高倍率52週高値から弱点
AppleAAPLiPhone・Mac。端末の中でAIを動かす4,668億ドル+17%33%7%-199億ドル38x10.6x-1%なし
QualcommQCOMスマホ・PC向けのAI処理チップ441億ドル+4%23%16%-45億ドル21x4.5x-25%なし

端末の買い替えは景気に左右される。AIが買い替えの理由になるかは、まだ分からない。

読み方と注意

シナリオは予想ではなく、互いに排他的でもない(2000〜02年には複数が同時に起きた)。会社は各領域の上場企業の例で、数字と弱点の印は「生き残りの条件」と同じ計算(SECに出された決算の直近4四半期)。弾けた後に伸びる領域でも、体力の弱い会社は伸びる前に倒れうる。外国企業と非上場の会社は入っていない。

投資の助言ではない。 生き残りの5つの条件 →

出典

他のページと共通の2000年の事実(Global Crossing・Lucent・Verizon・Oracle・Nortel)の出典は「ITバブル」のページにある。

2026年9月29日 11:24 更新・株価は2026年9月28日まで