コモディティ・スーパーサイクル 1850–2025

商品の値段は、30年に1度の大波をくり返してきた。

石油・銅・小麦などの値段は、景気に合わせて数年ごとに上下するだけではない。もっと大きな、30年ほどの波にも乗っている。15年ほど上がり続け、15年ほど下がり続ける。これを「スーパーサイクル」と呼ぶ。このサイトは、42品目・175年分のデータで、その波が本当にあったのか、なぜ起きるのか、今はどこにいるのかを確かめる。

3行でいうと

  1. 1900年から、値段が15年ほど上がり続け、15年ほど下がり続ける大波が4回あった。
  2. 偶然ではない。42品目が同じ時期にそろって高くなり、そろって安くなった。でたらめな値動きでは、こうはならない。
  3. 2020年から値段は上がっている(金・銀・銅は歴史的な高さ)。ただ、それが5回目の大波の始まりか、数年で終わる上げかは、まだ区別できない。

スーパーサイクルとは

毎年の値段を「ふだんの水準」(長い目で見たときの平均的な値段)と比べる。すると、値段がふだんより高い時期が何十年も続き、そのあと安い時期が何十年も続く。この長い上下が、スーパーサイクル。

値段が「ふだんの水準」より何%高かったか・安かったか42品目をまとめた値段(物価の上昇分は除いた)。0%の線が「ふだんの水準」。4つの山が4回の大波で、色の帯は値段が上がり続けた期間。

専門的には、実質価格の指数から長期トレンド(ふだんの水準)と20年より短い上下(ふつうの景気の波など)を除いた、20〜70年の周期の部分。計算の方法は「本当にあったのか」のページにある。

4回の大波

どの波も、15年ほど上がり続けた。きっかけは毎回違うが、いつも大きな需要の増加だった。

1

米国の工業化と第一次世界大戦

1903 → 山 1917 → 1932

何が起きたか
米国が急速に工業化し、鉄・銅・石炭の需要が伸び続けた。第一次世界大戦がさらに需要を押し上げた。
上がった14年間
42品目中30品目が値上がりし、全体で1.5倍(物価の上昇分を除く)。
上げが大きかった品目:カリ 5.2倍・硫黄 3.0倍・プラチナ 2.8倍
その後
戦後の反動と大恐慌で需要が崩れ、増えていた供給が余った。1932年までに、山から59%下がった。
2

再軍備・戦後復興・朝鮮戦争

1932 → 山 1947 → 1966

何が起きたか
再軍備と第二次世界大戦、戦後の欧州と日本の復興が需要を支えた。
上がった15年間
42品目中33品目が値上がりし、全体で1.7倍(物価の上昇分を除く)。
上げが大きかった品目:綿実 5.1倍・ライ麦 5.0倍・大麦 4.8倍
その後
1950〜60年代の世界経済が強く、大きな下げは来なかった。1966年まで、値段はほぼ横ばいだった。
3

石油危機とインフレの1970年代

1966 → 山 1981 → 1996

何が起きたか
1973年と1979年の石油危機で原油が急騰し、世界的なインフレも重なった。
上がった15年間
42品目中22品目が値上がりし、全体で2.1倍(物価の上昇分を除く)。
上げが大きかった品目:金 4.7倍・天然ガス 4.4倍・原油 4.4倍
その後
高値で始めた増産と省エネで石油が余り、1986年に原油が暴落した。1996年までに、山から56%下がった。
4

中国の工業化と都市化

1996 → 山 2011 → 今

何が起きたか
中国の工業化・都市化で、中国が世界の金属の半分を使うようになった(20年で10%から50%へ)。
上がった15年間
42品目中37品目が値上がりし、全体で2.2倍(物価の上昇分を除く)。
上げが大きかった品目:銀 4.7倍・リン鉱石 3.5倍・硫黄 3.3倍
その後
中国の減速と、高値のときに決めた鉱山・シェールオイルの増産が重なった。2025年には山から44%下(まだ途中)。

それぞれの波の背景をくわしく →

波は本物か、統計の見かけか

値動きがでたらめなら、どの時期でも「ふだんより高い」品目はおよそ半分で、割合は灰色の帯の中に収まるはずだ。実際は、42品目のほぼ全部が同じ時期に高くなり、同じ時期に安くなることを何度もくり返した。

42品目のうち、「ふだんの水準」より高かった品目の割合(%)灰色の帯:値動きがでたらめだった場合に、割合が収まる範囲(10回に9回)。

物価の上昇分の除き方を変えても波は残り、その時期は、別々に調べた経済学者たちの年表とも一致する。

3つの検証をくわしく →

なぜ起きるのか

  1. 1
    需要が長く伸びる

    大きな経済が工業化・都市化すると、鉄・銅・エネルギーの使い方が10年以上にわたって増える。一国の景気の波より長い。

  2. 2
    供給は遅れてしか増えない

    鉱山は発見から生産開始まで平均16年以上かかる(IEA、2010〜19年に操業を始めた主要鉱山)。値上がりしても、すぐには増産できない。

  3. 3
    遅れて出た供給が余る

    高値のときに決めた投資が、需要の伸びが鈍ったころに生産を始める。余った供給が、長い下げの局面を作る。

データで分かった意外な点:毎年植え直せる農産物も、鉱山の資源と同じくらいの大きさで、同じ時期に波打つ。遅い鉱山だけの話ではなく、世界経済の成長やインフレのように、全品目をまとめて押し上げるものが効いている。

なぜ起きたのかをくわしく →

今はどこにいるか

4回目の波の山は2011年。2020年から値段は上がり、大きく上がった品目もあるが、30年の波の線はまだ谷のあたり(2025年に-3%)にいる。この2つは矛盾しない。波の線は、上げが何年も続いてからでないと上を向かず、今のデータでは「長く続く上げ」と「数年で終わる上げ」の見分けがつかないからだ(今年に入ってからの上げも、まだ波の線に入っていない)。過去に同じ状況は3回あり、2回は大波になった。

歴史的に高い

  • 金99
  • 銀98
  • 天然ガス(欧州)97
  • 銅95
  • スズ93
  • 亜鉛86
  • プラチナ83
  • リン鉱石80

中くらい

  • カリ(塩化カリウム)78
  • 石炭(豪州)71
  • カカオ71
  • 原油(3種平均)69
  • 牛肉62
  • コーヒー(アラビカ)54
  • 鉄鉱石49
  • アルミニウム41
  • パーム油40
  • 鉛35
  • 小麦(米国)34

歴史的に安い

  • ニッケル29
  • 天然ガス(米国)28
  • トウモロコシ24
  • 砂糖(国際)20
  • 大豆15
  • 綿花11
  • コメ(タイ)10

数字:1960年以降の歴史の中で、今の値段がどのくらい高いか(0=最も安かった月、100=最も高かった月)。物価の上昇分を除いた値段、2026年8月時点。

2000年代の大波の同じ時点と比べると、全体の上がり方は小さい(1.17倍、2000年代は1.55倍)が、2割以上上がった品目の数は同じくらい(26品目中13品目、2000年代は11品目)。主役は違い、2000年代は石油、今回は金・銀。新しい大波かどうかは、何年も後にならないと分からない。

2000年代の大波の始まりとの比較をくわしく →

2026年9月29日 02:33更新・年次データは2025年まで・月次の価格は2026年8月まで