今はどこか
新しい大波は、始まったのか。
このページの要点
- 値段は2020年の底から上がったが、2025年まではほぼ「戻り」だった。全体ではコロナ前の2019年の0.99倍に戻っただけ。コロナ前をはっきり超えて上がり始めたのは2026年に入ってから(2026年8月に1.17倍)で、まだ8か月しかたっていない。
- だから「底からの上げは短い動きで、大きな波とは別の話」と決まったわけではない。戻りの部分は短い動きだったが、戻りを超えた新しい上げが30年の大波の始まりか、数年で終わる上げかは、まだ区別できない。
- 30年の波の線が「谷のあたり」にいるのは、この線が上げが何年も続いてからでないと上を向かないうえ、2026年の上げが、線を引く年次のデータにまだ入っていないからだ。
- 過去に同じ状況は3回あった。2回は大波になり(1970年代・2000年代)、1回は小さな波で終わった(1930年代)。
- 今回の上げは、その3回より小さい(2020年の底から1.20倍。過去は1.6〜2.0倍)。主役も石油ではなく金・銀。
上がっているのに、なぜ波は「谷」に見えるのか
このサイトには、混同しやすい2つのものが出てくる。1つは実際の値段。もう1つは30年の波で、数年で上下するふつうの動きをならして除いたもの。値段が急に上がると、実際の値段はすぐ動くが、波の線はほとんど動かない。今あるデータだけでは、その上げが長く続くのか数年で終わるのかを区別できないので、ひとまず「短い上げ」として扱うからだ。
2020年の底からの上げは、コロナ前の年と比べて2つに分けると分かりやすい。
| 2025年の平均(2019年比) | 2026年8月(2019年比) | |
|---|---|---|
| 全体 | 0.99倍 | 1.17倍 |
| エネルギー | 0.92倍 | 1.16倍 |
| 金属 | 1.13倍 | 1.43倍 |
| 貴金属 | 1.91倍 | 2.51倍 |
| 農産物 | 1.11倍 | 1.10倍 |
- 2020〜2025年:ほぼ「戻り」
全体の値段は、コロナ前の水準に戻っただけ(2019年の0.99倍、エネルギーは0.92倍)。例外は貴金属(1.91倍)と金属(1.13倍)で、この時点ですでにコロナ前を超えていた。
- 2026年から:戻りを超えた上げ
2026年8月には全体で2019年の1.17倍になり、エネルギー・金属・貴金属がそろって上がった。大波の始まりかもしれないのはこの部分だが、まだ8か月しかたっておらず、波の線を引く年次の指数にも入っていない。
つまり「底からの上げは短い動きで、大きな波とは別の話」と言い切れるわけではない。戻りの部分は短い動きだったが、新しい部分は短いか長いかを決めるにはまだ若すぎる。値段が高いままあと数年続けば、オレンジの線は後から上向きに引き直される(2005年のあとに実際にそうなった。下の「なぜ、まだ分からないのか」)。数年で下がれば、線はこのまま谷を作る。
指数は Jacks のもの(1975年の生産額で加重しているので、エネルギーの比重が大きい)で、2025年まで。下の世界銀行の月次の数字は2026年8月までで、品目の重みも違うので、数字は少し違う。
過去の、同じような状況
底から数年で30%以上上がったのに、その時点のデータで見ると波はまだ「ふだん」かそれより下だった年。そのあと、どうなったか。
| 年 | 底からの上げ | その時点で見えた波 | その後(10年のうち) | 波の山 | その年から山までの値段 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1937 | 1931 → 1937: ×1.61 | -9% | 波は来たが弱かった(最大+4%。概要の2回目の波) | 1947 | ×1.09(底から1.75倍) |
| 1974 | 1971 → 1974: ×1.95 | 0% | 大波になった(ふだんより最大+51%) | 1981 | ×1.16(底から2.25倍) |
| 2005 | 1999 → 2005: ×2.03 | -4% | 大波になった(ふだんより最大+35%) | 2011 | ×1.42(底から2.88倍) |
| 2025(今) | 2020 → 2025: ×1.20 | -3% | まだ分からない | — | — |
1930年代は大恐慌の底からの戻りで、そのあとの波は小さかった。1970年代と2000年代は上げが続き、大波になった。大波になった2回も、表の年から山(1981年・2011年)まで、値段はさらに1.2〜1.4倍上がった。今回の上げも、急落(コロナ)からの戻りという面があり、ここまでの上げは3回のどれよりも小さい。3回中2回というのは予想ではない。今と同じような位置から、どちらの結果も実際に起きた、ということだ。
決め方:底は直前6年で最も安かった年(3年以上前)。その時点で見えた波は、その年までのデータだけで引いたもの。続いた年はまとめ、上げがいちばん大きかった年を示した。「大波になった」は、10年のうちに波がふだんより20%以上高くなったこと(今のデータで見て)。
2000年代の大波の始まりと比べる
2000年代の大波(4回目、中国の波)も今回の上げも、危機のあとに始まった(1998〜99年のアジア・ロシア危機、2020年のコロナ)。そこで、それぞれ危機の前の年(1997年と2019年)と比べ、危機の底から同じ6年4か月たった時点で並べる。2000年代の大波はそこで終わったわけではなく、2008〜11年まで続いたので、最終的にどこまで上がったかも並べた。
| 2000年代の大波・同じ時点 1997年→2005年6月 | 2000年代の大波・最終的な山 1997年→2012年までの最高 | 今回 2019年→2026年8月 | |
|---|---|---|---|
| 全体の値段(物価の上昇分を除く) | 1.55倍 | 3.12倍2008年6月 | 1.17倍 |
| 2割以上上がった品目(26品目中) | 11 | 25 | 13 |
| 下がった品目 | 11 | 0 | 6 |
| いちばん上がったグループ | エネルギー 2.25倍 | エネルギー 4.75倍 | 貴金属 2.51倍 |
| エネルギー | 2.25倍 | 4.75倍2008年6月 | 1.16倍 |
| 金属 | 1.16倍 | 2.30倍2008年3月 | 1.43倍 |
| 貴金属 | 1.13倍 | 4.12倍2011年8月 | 2.51倍 |
| 農産物 | 0.78倍 | 1.43倍2011年2月 | 1.10倍 |
2000年代の大波は、この時点のあとも上がり続けた。全体の値段は1997年の1.55倍から、2008年6月には3.12倍になり、最終的に26品目中25品目が2割以上上がった。今回が同じところまで行くには、今の値段からさらに約2.7倍上がる必要がある。
2000年代の始まりは石油などのエネルギーが主役で、農産物はまだ下がっていた。今回の主役は金・銀・スズ・銅、それにコーヒーとカカオで、原油と穀物の多くはほとんど動かず、鉄鉱石・ニッケル・鉛は下がっている。2000年代の波は、2008〜11年の山までにほとんどの品目を押し上げた。今回はまだそうなっていない。
1990年からの4つのグループ
なぜ、まだ分からないのか
30年の波のどこにいるかを決めるには、その年の前と後の両方のデータが要る。最新の年には「後」がまだ無いので、見えている値は仮のもので、あとのデータで書き換わる。グラフは、その時点で見えていた値(点)と、今のデータで見た線(黒)を並べたもの。
数値で見る
| データの終わり | その時点で見えた値 | 2025年までのデータで見た値 | 書き換わった幅 |
|---|---|---|---|
| 1975 | +4% | +23% | +19ポイント |
| 1985 | +14% | +28% | +13ポイント |
| 1995 | -23% | -41% | -18ポイント |
| 2005 | -4% | +7% | +11ポイント |
| 2011 | +22% | +35% | +14ポイント |
| 2016 | +16% | +19% | +3ポイント |
| 2020 | -1% | +4% | +5ポイント |
いちばん分かりやすいのは2005年。値段はすでに急上昇していたのに、その時点では波は「ふだんより4%下」に見えていた。後のデータで見ると、その年は+7%で、上げの途中だった。今も同じことが起きているかもしれない。2025年の値(-3%)も、この先の年のデータが出れば動く。
品目ごとの、今の値段の高さ
| 品目 | 分類 | 歴史の中での高さ(0=最も安い、100=最も高い) | 2000年以降で最も高かった月 | その月と比べた今 |
|---|---|---|---|---|
| 金 | 貴金属 | 99 | 2026年2月 | -14% |
| 銀 | 貴金属 | 98 | 2026年1月 | -31% |
| 天然ガス(欧州) | エネルギー | 97 | 2022年8月 | -73% |
| 銅 | 金属 | 95 | 2011年2月 | -4% |
| スズ | 金属 | 93 | 2026年8月 | 0% |
| 亜鉛 | 金属 | 86 | 2006年11月 | -46% |
| プラチナ | 貴金属 | 83 | 2008年5月 | -44% |
| リン鉱石 | 肥料 | 80 | 2008年12月 | -76% |
| カリ(塩化カリウム) | 肥料 | 78 | 2022年4月 | -72% |
| 石炭(豪州) | エネルギー | 71 | 2022年9月 | -72% |
| カカオ | 農産物 | 71 | 2025年1月 | -47% |
| 原油(3種平均) | エネルギー | 69 | 2008年7月 | -58% |
| 牛肉 | 農産物 | 62 | 2014年9月 | -16% |
| コーヒー(アラビカ) | 農産物 | 54 | 2011年4月 | -19% |
| 鉄鉱石 | 金属 | 49 | 2007年11月 | -69% |
| アルミニウム | 金属 | 41 | 2006年5月 | -32% |
| パーム油 | 農産物 | 40 | 2008年3月 | -48% |
| 鉛 | 金属 | 35 | 2007年10月 | -69% |
| 小麦(米国) | 農産物 | 34 | 2008年3月 | -52% |
| ニッケル | 金属 | 29 | 2007年5月 | -80% |
| 天然ガス(米国) | エネルギー | 28 | 2005年10月 | -88% |
| トウモロコシ | 農産物 | 24 | 2012年7月 | -54% |
| 砂糖(国際) | 農産物 | 20 | 2011年1月 | -61% |
| 大豆 | 農産物 | 15 | 2012年8月 | -52% |
| 綿花 | 農産物 | 11 | 2011年3月 | -72% |
| コメ(タイ) | 農産物 | 10 | 2008年4月 | -67% |
歴史の中での高さ:データの始まり(多くは1960年)からの月のうち、物価の上昇分を除いた値段が今より安かった月の割合。世界銀行の月次価格を米CPIで2026年8月のドルに直した。
「新しいスーパーサイクルが始まった」という人たち
- 2005年Citigroup(Alan Heap)
中国の工業化で、商品は数十年続くスーパーサイクルに入った。
出典:Heap 2005
- 2022年1月Goldman Sachs(Jeff Currie)
商品には「極めて強気」。10年続きうるスーパーサイクルの中にいる。
- 2026年5月Jeff Currie(Carlyle 上級顧問)
スーパーサイクルはまだ序盤。2020年以降に設備投資が減り、在庫が薄いまま需要が伸びる。
今のところのデータ:2020年からの上げは、2000年代の大波の始まりと同じくらいの広がりがあるが、全体の上がり方は小さく、主役も違う。長期の指数では、2025年の波はまだほぼ「ふだんの水準」(-3%)で、Jacks も同じ読み方をしている(「おそらく谷の近く」)。この主張は、正しいとも間違いとも言えない。決めるのは、この先数年のデータと、石油や穀物が加わるかどうか。
2026年9月29日 02:33更新・年次データは2025年まで・月次の価格は2026年8月まで