このページの要点

  1. 大きな国が工業化すると需要が何年も伸びるが、鉱山の増産は16年以上遅れる。遅れて出てきた供給が余り、値段は何年も下がる。
  2. 4回の波のきっかけは、米国の工業化、戦争と復興、石油危機、中国だった。
  3. 農産物も同じくらいの大きさで同じ時期に波打つ。遅い鉱山だけでは説明できない。
  4. 違うのは長い目で見た値段の流れ。農産物は年0.9%ずつ安くなってきたが、鉱山の資源はほぼ横ばい。

波が起きる仕組み

  1. 1
    需要が長く伸びる

    大きな経済が工業化・都市化すると、鉄・銅・エネルギーの使い方が10年以上にわたって増える。一国の景気の波より長い。

  2. 2
    供給は遅れてしか増えない

    鉱山は発見から生産開始まで平均16年以上かかる(IEA、2010〜19年に操業を始めた主要鉱山)。値上がりしても、すぐには増産できない。

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    遅れて出た供給が余る

    高値のときに決めた投資が、需要の伸びが鈍ったころに生産を始める。余った供給が、長い下げの局面を作る。

指数の上げの局面は、どれも谷から山まで15年ほどかかった。鉱山の発見から生産までの年数に近い。話の筋とは合うが、4つの波で証明できるものではない。

出典:Erten & Ocampo 2013 / IEA 2021

4つの波と、その背景

1

米国の工業化と第一次世界大戦

谷 1903 → 山 1917(+26%) → 次の谷 1932

上がった理由
19世紀末から米国が急速に工業化し、鉄鋼・銅・石炭・穀物の需要が長く伸びた。第一次世界大戦で需要はさらに膨らんだ。
終わった理由
戦後の反動と1929年からの大恐慌で需要が崩れ、増えていた供給が余った。価格はトレンドを大きく下回り、谷は1930年代前半。

出典:Erten & Ocampo 2013 / Heap 2005

2

再軍備・戦後復興・朝鮮戦争

谷 1932 → 山 1947(+4%) → 次の谷 1966

上がった理由
1930年代後半の再軍備と第二次世界大戦、戦後の欧州の復興と日本の高度成長が需要を支えた。
終わった理由
1950〜60年代の世界経済の成長が強かったため、下げの局面が弱い。この物差し(1975年の生産額で加重)では、上げ自体もごく小さい。

出典:Erten & Ocampo 2013

3

石油危機とインフレの1970年代

谷 1966 → 山 1981(+51%) → 次の谷 1996

上がった理由
1973年の石油禁輸で原油価格はほぼ4倍になり、1979年のイラン革命で再び急騰した。ドルと金の交換停止(1971年)の後のインフレも重なった。この波は、エネルギーを除くとずっと小さい。
終わった理由
1980年代に入ると、高値で始まった北海・アラスカなどの増産と省エネで石油が余り、1986年に原油が暴落した。金属も1980〜90年代に長く下げた。

出典:Fed History(1973–74) / Fed History(1978–79) / Erten & Ocampo 2013

4

中国の工業化と都市化

谷 1996 → 山 2011(+35%) → 次の谷 途中

上がった理由
1997〜2017年に中国の金属消費は世界の10%から50%になり、世界の金属消費の増加分の5分の4を占めた。1998〜2008年に実質のエネルギー価格は5倍、金属は2.4倍になった。
終わった理由
2010年代に中国の成長が減速し、高値のときに決めた鉱山・シェールオイルの増産が遅れて出てきた。2014〜16年に原油と金属が大きく下げた。

出典:世界銀行 2018 / Heap 2005

鉱物と農産物

鉱山の長い準備期間だけが理由なら、毎年植え直せる農産物より、鉱物のほうがずっと大きく波打つはずだ。データは半分だけそれを支持する。

3つのグループの波(それぞれの長期トレンドより何%高いか・低いか)
波の大きさ(平均的な振れ幅)山の年
育てるもの(農産物・畜産物)15%1915, 1945, 1975, 2016
地中の資源(エネルギー・金属・鉱物)24%1919, 1955, 1981, 2010
地中の資源(エネルギーを除く)15%1914, 1939, 1982, 2012

指数で見ると地中の資源のほうが大きく波打つが、その多くはエネルギーの分で、エネルギーを除くと農産物と変わらない。品目ごとに見ても、波の大きさは同じくらい(平均的な振れ幅の中央値:地中の資源20品目で22%、育てるもの22品目で21%)で、それぞれの中でのそろい方(0.50と0.51)も、2つの間のそろい方(0.39)も近い。

つまり、供給の遅れだけでは波は説明できず、全品目を同時に動かすものがある。考えられるのは、世界経済の成長(Erten & Ocampo は、石油以外の商品価格が世界のGDPに遅れて動くことを示した)、作物を育てるコストとしてのエネルギー、ドルとインフレなど。

長期トレンドは違う

2つが違うのは、波の下にある長期トレンドだ。育てるものの中央値は、実質で年0.9%ずつ下がってきた(農業の生産性が上がったため)。地中の資源の中央値はほぼ横ばい(年-0.1%)。農産物の波は、毎回より低いところから始まる。Erten & Ocampo はこれを、一次産品は工業製品に対して長い目で値下がりするというプレビッシュ=シンガーの見方を支持するものと見ている。

石油は例外

多くの商品では、世界経済の成長が先で価格が後から付いてくる。石油については、Erten & Ocampo は逆を見つけた。石油の値上がりが先に来て、世界経済の成長を抑える。この指数で最も大きい1970年代の波は、石油の波だった。

2026年9月29日 02:33更新・年次データは2025年まで・月次の価格は2026年8月まで