このページの要点

  1. 42品目の波は、同じ時期にそろって上下した。でたらめな値動きで500回試しても、一度もそうならなかった。
  2. 物価の上昇分の除き方を変えても、そろって動くことは変わらなかった。
  3. 見つかった4回の波の時期は、別々に調べた研究者の年表と合う。
  4. ただし、今が波のどこにいるかは、その時点では分からない。何年も後に分かる。

波の取り出し方

実質価格を、動きの速さで3つに分ける。70年以上かけて動く長期トレンド、20〜70年の波(スーパーサイクル)、20年より短い上下(ふつうの景気の波など)。3つを足すと元の値段に戻る。分け方は統計の決まった道具(Christiano–Fitzgerald のフィルター)を使い、Cuddington & Jerrett(2008)、Erten & Ocampo(2013)、Jacks(2019)と同じ。

手順1:実際の値段と、ならした線、ふだんの水準(1900年=100・対数目盛)青:42品目の実質価格の指数(Jacks、1975年の生産額で加重)。オレンジ:短い上下をならした線。灰色:ふだんの水準(長期トレンド)。
手順2:ふだんの水準との差を、波(オレンジ)と短い上下(青)に分ける(%)短い上下は激しく細かい。波は、その下にあるゆっくりした上げ下げ。

検証 1

品目どうしは、そろって動くか

波を取り出す道具(フィルター)は、でたらめな数字の並びからも波を作ってしまう。けれども、互いに関係のない品目どうしを、同じ時期にそろって上下させることはできない。そこで、品目ごとの波が、偶然では起こりえないほどそろって動くかを確かめる。

偽の価格は、品目ごとの年々の変化(大きさと長期の上げ下げ)はそのままに、順番だけを無作為に並べ替えて作る。品目どうしは無関係になる。42品目の偽の価格を500組作り、同じフィルターをかけた。

実データ0.45品目どうしのそろい方(0=無関係、1=完全にそろう)
偽の価格0.05500回試して最も高い値
そろい方:偽の価格(棒)と実データ(線)棒:偽の価格500回の結果が、どの値に何回出たか。どれも0の近くに集まり、実データはそこから大きく右に離れている。
42品目のうち、波がトレンドより上にある品目の割合(%)灰色の帯:互いに無関係な偽の価格なら、割合はほぼこの中に収まる(10回に9回)。薄い茶色の帯:指数の上げの局面。

波が雑音なら、割合は半分前後の灰色の帯の中に収まるはずだ。実際はほぼ全品目からほぼゼロまで大きく振れ、その時期は指数の波と重なる。

検証 2

物価の割り方のせいではないか

実質価格は、名目の値段を同じ物価指数(デフレーター)で割ったもの。だから物価指数そのものに波があれば、全品目が同時に動き、それだけで「そろって動く」ように見えてしまうおそれがある。そこで1960〜2025年について、同じ24品目を2通りに実質化して検定し直した。米国の消費者物価(Jacks)と、Erten & Ocampo が勧める世界銀行の工業製品の輸出単価(MUV)。

割った物価指数実データのそろい方(0〜1)偽の価格:100回に95回はこれ以下偽の価格の最大
米CPI(Jacks)0.730.040.15
工業製品の輸出単価 MUV(世界銀行)0.590.050.12

デフレーターを変えても同調は残る。米国の消費者物価自体にも20〜70年の波はあり(1947〜2024年の平均的な振れ幅12%)、実質価格の波の一部はインフレの裏返しでもある。ただ、品目どうしがそろう理由はそれだけではない。

検証 3

年表は先行研究と合うか

研究見つかった波出典
このサイト(Jacks のデータ、1900年〜)1903→1917、1932→1947、1966→1981、1996→2011(谷→山)—
Jacks(2026年のチャートブック)完全な波が3つ。最新の波は1996年に始まり2011年に山、「今はおそらく谷の近く」。Jacks, D.S. (2026)「Chartbook of Real Commodity Prices, 1850-2025」
Erten & Ocampo(2013)、石油を除く1894〜1932年(山1917年)、1932〜1971年(山1951年)、1971〜1999年(山1973年)、2000年代の上げ。30〜40年の波で、トレンドの上下20〜40%。Erten, B. & Ocampo, J.A. (2013)「Super Cycles of Commodity Prices Since the Mid-Nineteenth Century」World Development 44(国連の作業論文版)
Cuddington & Jerrett(2008)、金属約150年で3つのスーパーサイクルと、4つ目の初期。Cuddington, J. & Jerrett, D. (2008)「Super Cycles in Real Metals Prices?」IMF Staff Papers 55(4)
Heap(2005、Citigroup)上げは10〜35年、1周は20〜70年。大きな経済の工業化が起こす。Heap, A. (2005)「China: The Engine of a Commodities Super Cycle」Citigroup(Erten & Ocampo 2013 による紹介)

データ・加重・デフレーターが違っても、大まかな年表は同じになる。山は第一次世界大戦のころ、第二次世界大戦の後、1970年代、2010年ごろ。谷は1930年代、1960年代、1990年代の終わり。

検証で言えないこと

  1. フィルターは雑音からも波を作る

    周期の帯を決めて取り出すと、でたらめな系列からもそれらしい波が出る(スルツキー効果)。だからこのサイトは「波がある」ことではなく「品目どうしがそろって動く」ことを確かめる。独立な系列をそろわせることはフィルターにはできない。

  2. 数えられる波は4つしかない

    1900年からの125年で、完全に終わった波は3つ。「上げは15年ほど続く」といった規則性は、4つの例からの目安でしかない。

  3. 20〜70年という帯は約束ごと

    先行研究が使う帯をそのまま使った。帯を変えれば、山と谷の年は数年動く。

  4. 最後の数年はあとで書き換わる

    フィルターの端は、その先のデータが無いので不安定になる。「今どこにいるか」は、10年ほど後にならないと確定しない(「今」のページで実例を示す)。

  5. 物差しで形が変わる

    Jacks の指数は1975年の生産額で加重しているのでエネルギーの比重が大きい。1970年代の波が大きいのはそのため。農産物を重く見る指数では、別の波が大きく見える。

最後の数年がどれだけ書き換わるか →

2026年9月29日 02:33更新・年次データは2025年まで・月次の価格は2026年8月まで