円の実力(1964年〜)円安 57
今 62
180 円高

円安は続くのか。日本の金利はどこまで上がるのか。

3行でいうと

  1. 円の実力は、最も強かった1995年の約3分の1まで下がった。1ドル360円だった1960年代と同じくらいの安さで、1970年以降ではいちばん低い。
  2. 理由は2つ。日本だけ金利がほぼゼロだったこと(2022年からの米国の利上げで差が一気に開いた)と、日本が稼いだお金が円に戻らず、企業や個人の海外への投資に回っていること。よく言われるデジタル赤字は、訪日客が落とすお金でほぼ打ち消されている。
  3. ここまで安くなった通貨は、過去は5年でほぼ戻った。ただし戻り方の半分近くは為替ではなく物価の差によるもの。円が安いときに外国の資産を買った人は、為替ヘッジをかけた方が成績がよかった(米国株を5年で、年2.3%の差)。
ドル円
157.36円
2026年9月29日。1年前は149.40円
円の実力
62.0
2026年7月。1995年の山は180
日本の10年国債
3.08%
2026年9月28日。1996年以来の高さ
日米の金利差(2年)
2.56%
2026年8月の月平均。1年前は2.88%

何が起きてきたか:円は30年かけて3分の1に

  1. 1971年まで1ドル=360円為替は国が決めた値に固定されていた
  2. 1995年1ドル=84円円がいちばん強かった時期。円の実力は1970年の2.6倍に
  3. 今1ドル=157円円の実力は1995年の約3分の1。1960年代と同じくらい

157円なのに、なぜ360円の時代と同じくらい安いのか。この30年、外国では物価が毎年上がったのに、日本の物価はほとんど上がらなかった。同じ1万円で買える外国のモノやサービスの量で比べると、1960年代と同じくらいまで減っている。これが「円の実力」(物価の違いまで入れた円の強さ)。

円の実力(物価の違いまで入れた、いろいろな通貨に対する円の強さ。2020年=100)上に行くほど円が強い。専門用語では「実質実効為替レート」(国際決済銀行が27の国・地域について計算)。
数値で見る
時点円の実力
1964年1月57
1965年1月63
1966年1月64
1967年1月64
1968年1月66
1969年1月66
1970年1月68
1971年1月68
1972年1月76
1973年1月80
1974年1月86
1975年1月86
1976年1月87
1977年1月95
1978年1月107
1979年1月120
1980年1月92
1981年1月107
1982年1月98
1983年1月98
1984年1月101
1985年1月97
1986年1月113
1987年1月131
1988年1月144
1989年1月140
1990年1月119
1991年1月122
1992年1月130
1993年1月132
1994年1月149
1995年1月158
1996年1月142
1997年1月127
1998年1月129
1999年1月140
2000年1月150
2001年1月137
2002年1月121
2003年1月122
2004年1月125
2005年1月122
2006年1月107
2007年1月98
2008年1月102
2009年1月134
2010年1月119
2011年1月128
2012年1月136
2013年1月112
2014年1月96
2015年1月92
2016年1月97
2017年1月99
2018年1月95
2019年1月99
2020年1月99
2021年1月97
2022年1月87
2023年1月78
2024年1月69
2025年1月69
2026年1月64
2026年7月62

なぜ安くなったか:金利と、戻らないお金

理由1 金利

104→154円

日本は30年近く金利をほぼゼロにしてきた。2022年に米国が急に利上げすると、日米の金利差は+0.3%から+3.6%に開き、ドル円は2021〜24年に104円から154円へ。お金は利息の高い通貨に向かう。

理由2 戻らないお金

-1.2兆円

海外から年42兆円を稼ぐが、11兆円は海外の子会社に残る。さらに企業が15兆円、個人が投資信託で11兆円を海外に投じた。差し引くと円は売られている(直近12か月)。

円を買う流れ(+)と売る流れ(−):直近12か月(〜2026年7月、兆円)青は円を買う流れ、橙は売る流れ、緑は差し引き。国際収支(日本銀行)から、実際に円と外貨が交換されやすい分だけを取り出した。
数値で見る
兆円
モノとサービス-2.0
所得(円に戻る分)+26.6
企業の海外投資-15.1
投資信託の外国投資-10.7
差し引き-1.2

よく言われる「デジタル赤字」(クラウドや動画・ソフトへの支払い)は年6.5兆円。大きいが、訪日客が日本で使うお金(+6.2兆円)でほぼ打ち消されている。

くわしく:金利差が効いた時期と効かなかった時期、流れの年ごとの変化 →

この先:安すぎた通貨は戻ってきた。ただし為替とは限らない

「物価で戻る」とは? ハンバーガーで考える

今

同じハンバーガーが、日本では500円、米国では5ドル(=787円)。日本の方が36%安い。これが「円が安い」ということ。

戻り方A:為替で戻る

1ドルが100円になる。米国の5ドルも500円になり、値段がそろう。

→ 米国株などドルで持つ資産は、円で見て36%目減りする。

戻り方B:物価で戻る

1ドルは157円のまま。日本のハンバーガーが787円に値上がりし(給料も上がる)、値段がそろう。

→ ドルで持つ資産は目減りしない。代わりに、円の預金で買えるものが減る。

実際にはAとBが混ざって起きる。過去の26か国では、戻った分のおよそ半分が為替、残りが物価だった。どちらで戻るかで、外国の資産を持つ人の損得は大きく変わる。

くわしく:26か国の例 →

自分の資産には:いつ買ったかで、ヘッジの損得が逆になる

100万円で米国株を買った月5年後:ヘッジなし5年後:ヘッジあり
2007年6月円が安かった・123円65万円98万円
2011年10月円が最も強かった・77円256万円189万円
2020年12月最近・104円295万円168万円

太字がよかった方。円が安いときに買った米国株は、その後の円高で目減りしやすく、為替ヘッジ(為替の上げ下げを消す仕組み)をかけた方がよかった。1973年からの全部の月で確かめても、円が安いときに始めた5年はヘッジありの方が年2.3%よかった。ただし今はヘッジの費用が年約2.7%かかる。

くわしく:ヘッジあり・なし、円高の目減り、日本から使える手段 →

前提の点検:円安は続いているか

日本人の投資家にとって、外国の資産の損益はすべて円で決まる。金・AI・米国株のどのサイトの結果も、円が今の安さのままかどうかで大きく変わる。その「円安が続く」という前提を、3つの点検で毎朝見ている。

前提:円安は続く 続いている

円安は続いている。点検の3つのうち、円高の方向に出ているのは1つだけ

  • 円高の方向円の実力(実質実効レート)は1970年以降でいちばん低い(歴史的に安すぎて、戻る力がたまっている)
  • 円安のまま日米の2年金利差は2.56%(1年前は2.88%、-0.31%)
  • 円安のまま円の実需(直近12か月)は-1.2兆円(円を売る流れの方が多い)

判定の決まり:3つのうち2つ以上が円高の方向なら「揺らぎ始め」、ドル円が2年の高値(162円)から10%以上下がったら「崩れた」。今は高値から1.0%下。

詳しく見る

2026年9月29日 12:04更新・実効為替は2026年7月まで・国際収支は2026年7月まで