円安は続くのか。日本の金利はどこまで上がるのか。
3行でいうと
- 円の実力は、最も強かった1995年の約3分の1まで下がった。1ドル360円だった1960年代と同じくらいの安さで、1970年以降ではいちばん低い。
- 理由は2つ。日本だけ金利がほぼゼロだったこと(2022年からの米国の利上げで差が一気に開いた)と、日本が稼いだお金が円に戻らず、企業や個人の海外への投資に回っていること。よく言われるデジタル赤字は、訪日客が落とすお金でほぼ打ち消されている。
- ここまで安くなった通貨は、過去は5年でほぼ戻った。ただし戻り方の半分近くは為替ではなく物価の差によるもの。円が安いときに外国の資産を買った人は、為替ヘッジをかけた方が成績がよかった(米国株を5年で、年2.3%の差)。
何が起きてきたか:円は30年かけて3分の1に
- 1971年まで1ドル=360円為替は国が決めた値に固定されていた
- 1995年1ドル=84円円がいちばん強かった時期。円の実力は1970年の2.6倍に
- 今1ドル=157円円の実力は1995年の約3分の1。1960年代と同じくらい
157円なのに、なぜ360円の時代と同じくらい安いのか。この30年、外国では物価が毎年上がったのに、日本の物価はほとんど上がらなかった。同じ1万円で買える外国のモノやサービスの量で比べると、1960年代と同じくらいまで減っている。これが「円の実力」(物価の違いまで入れた円の強さ)。
数値で見る
| 時点 | 円の実力 |
|---|---|
| 1964年1月 | 57 |
| 1965年1月 | 63 |
| 1966年1月 | 64 |
| 1967年1月 | 64 |
| 1968年1月 | 66 |
| 1969年1月 | 66 |
| 1970年1月 | 68 |
| 1971年1月 | 68 |
| 1972年1月 | 76 |
| 1973年1月 | 80 |
| 1974年1月 | 86 |
| 1975年1月 | 86 |
| 1976年1月 | 87 |
| 1977年1月 | 95 |
| 1978年1月 | 107 |
| 1979年1月 | 120 |
| 1980年1月 | 92 |
| 1981年1月 | 107 |
| 1982年1月 | 98 |
| 1983年1月 | 98 |
| 1984年1月 | 101 |
| 1985年1月 | 97 |
| 1986年1月 | 113 |
| 1987年1月 | 131 |
| 1988年1月 | 144 |
| 1989年1月 | 140 |
| 1990年1月 | 119 |
| 1991年1月 | 122 |
| 1992年1月 | 130 |
| 1993年1月 | 132 |
| 1994年1月 | 149 |
| 1995年1月 | 158 |
| 1996年1月 | 142 |
| 1997年1月 | 127 |
| 1998年1月 | 129 |
| 1999年1月 | 140 |
| 2000年1月 | 150 |
| 2001年1月 | 137 |
| 2002年1月 | 121 |
| 2003年1月 | 122 |
| 2004年1月 | 125 |
| 2005年1月 | 122 |
| 2006年1月 | 107 |
| 2007年1月 | 98 |
| 2008年1月 | 102 |
| 2009年1月 | 134 |
| 2010年1月 | 119 |
| 2011年1月 | 128 |
| 2012年1月 | 136 |
| 2013年1月 | 112 |
| 2014年1月 | 96 |
| 2015年1月 | 92 |
| 2016年1月 | 97 |
| 2017年1月 | 99 |
| 2018年1月 | 95 |
| 2019年1月 | 99 |
| 2020年1月 | 99 |
| 2021年1月 | 97 |
| 2022年1月 | 87 |
| 2023年1月 | 78 |
| 2024年1月 | 69 |
| 2025年1月 | 69 |
| 2026年1月 | 64 |
| 2026年7月 | 62 |
なぜ安くなったか:金利と、戻らないお金
理由1 金利
104→154円
日本は30年近く金利をほぼゼロにしてきた。2022年に米国が急に利上げすると、日米の金利差は+0.3%から+3.6%に開き、ドル円は2021〜24年に104円から154円へ。お金は利息の高い通貨に向かう。
理由2 戻らないお金
-1.2兆円
海外から年42兆円を稼ぐが、11兆円は海外の子会社に残る。さらに企業が15兆円、個人が投資信託で11兆円を海外に投じた。差し引くと円は売られている(直近12か月)。
数値で見る
| 兆円 | |
|---|---|
| モノとサービス | -2.0 |
| 所得(円に戻る分) | +26.6 |
| 企業の海外投資 | -15.1 |
| 投資信託の外国投資 | -10.7 |
| 差し引き | -1.2 |
よく言われる「デジタル赤字」(クラウドや動画・ソフトへの支払い)は年6.5兆円。大きいが、訪日客が日本で使うお金(+6.2兆円)でほぼ打ち消されている。
この先:安すぎた通貨は戻ってきた。ただし為替とは限らない
- 通貨がここまで安くなった例は、日本以外では3か国だけ(オーストラリアの2001年、韓国の1998年、メキシコの1983年)。
- 韓国のウォンは1997年の通貨危機で平均より43%安くなり、5年後には実力で+51%戻った。
- 26か国をまとめると、平均より3割以上安かった通貨は5年後に平均+31%戻った。
- ただし戻った分(+16%)のうち、為替そのもので戻ったのは+9%。残りは「物価で戻った」分。
「物価で戻る」とは? ハンバーガーで考える
今
同じハンバーガーが、日本では500円、米国では5ドル(=787円)。日本の方が36%安い。これが「円が安い」ということ。
戻り方A:為替で戻る
1ドルが100円になる。米国の5ドルも500円になり、値段がそろう。
→ 米国株などドルで持つ資産は、円で見て36%目減りする。
戻り方B:物価で戻る
1ドルは157円のまま。日本のハンバーガーが787円に値上がりし(給料も上がる)、値段がそろう。
→ ドルで持つ資産は目減りしない。代わりに、円の預金で買えるものが減る。
実際にはAとBが混ざって起きる。過去の26か国では、戻った分のおよそ半分が為替、残りが物価だった。どちらで戻るかで、外国の資産を持つ人の損得は大きく変わる。
自分の資産には:いつ買ったかで、ヘッジの損得が逆になる
| 100万円で米国株を買った月 | 5年後:ヘッジなし | 5年後:ヘッジあり |
|---|---|---|
| 2007年6月円が安かった・123円 | 65万円 | 98万円 |
| 2011年10月円が最も強かった・77円 | 256万円 | 189万円 |
| 2020年12月最近・104円 | 295万円 | 168万円 |
太字がよかった方。円が安いときに買った米国株は、その後の円高で目減りしやすく、為替ヘッジ(為替の上げ下げを消す仕組み)をかけた方がよかった。1973年からの全部の月で確かめても、円が安いときに始めた5年はヘッジありの方が年2.3%よかった。ただし今はヘッジの費用が年約2.7%かかる。
前提の点検:円安は続いているか
日本人の投資家にとって、外国の資産の損益はすべて円で決まる。金・AI・米国株のどのサイトの結果も、円が今の安さのままかどうかで大きく変わる。その「円安が続く」という前提を、3つの点検で毎朝見ている。
円安は続いている。点検の3つのうち、円高の方向に出ているのは1つだけ
- 円高の方向円の実力(実質実効レート)は1970年以降でいちばん低い(歴史的に安すぎて、戻る力がたまっている)
- 円安のまま日米の2年金利差は2.56%(1年前は2.88%、-0.31%)
- 円安のまま円の実需(直近12か月)は-1.2兆円(円を売る流れの方が多い)
判定の決まり:3つのうち2つ以上が円高の方向なら「揺らぎ始め」、ドル円が2年の高値(162円)から10%以上下がったら「崩れた」。今は高値から1.0%下。
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2026年9月29日 12:04更新・実効為替は2026年7月まで・国際収支は2026年7月まで