円の実力(1964年〜)円安 57
今 62
180 円高

円はなぜ安いのか

このページの要点

  1. 2021年から24年、米国が物価高を抑えるために利上げし、日米の金利差は+0.3%から+3.6%に開いた。ドル円は104円から154円へ。この3年の円安は、金利差でかなりよく説明できる。でも1976年からの50年を見ると、金利差と円がはっきり一緒に動いたのは2008〜12年と2021〜24年だけ。1985〜89年のように、金利差が広がった月に円高が進むなど、動きが逆だった時期もある。
  2. もう1つの力は、お金の流れ。日本は海外から年42兆円を稼ぐが、11兆円は海外の子会社に残り、企業は15兆円を海外の工場や買収に、個人は投資信託で11兆円を外国の株などに投じている。差し引きすると、円を売る流れの方が多い(直近12か月で-1.2兆円)。
  3. よく言われるデジタル赤字(年6.5兆円)は、10年で3倍に増えた。ただ訪日客が使うお金(+6.2兆円)がほぼ同じだけ増えて、打ち消している。
  4. ただし、お金の流れだけで来年の円を当てることはできない。年ごとの流れとドル円の動きは、2015年より前はほとんど結びついていなかった(下の「データで見ると」)。

金利差は、いつも効くわけではない

「日米の金利差が広がると円安、縮むと円高」はよく聞く説明。だが1976年からの50年で確かめると、そうなっていたのは限られた時期だった。

ドル円(月平均)上に行くほど円安。
数値で見る
時点ドル円
1977年1月291
1978年1月241
1980年1月238
1981年1月202
1982年1月225
1983年1月233
1984年1月234
1985年1月254
1986年1月200
1987年1月155
1988年1月128
1989年1月127
1990年1月145
1991年1月134
1992年1月126
1993年1月125
1994年1月111
1995年1月100
1996年1月106
1997年1月118
1998年1月130
1999年1月113
2000年1月105
2001年1月117
2002年1月133
2003年1月119
2004年1月106
2005年1月103
2006年1月116
2007年1月120
2008年1月108
2009年1月90
2010年1月91
2011年1月83
2012年1月77
2013年1月89
2014年1月104
2015年1月118
2016年1月118
2017年1月115
2018年1月111
2019年1月109
2020年1月109
2021年1月104
2022年1月115
2023年1月130
2024年1月146
2025年1月156
2026年1月157
2026年8月159
日米の2年国債の利回りの差米国の2年国債の利回り − 日本の2年国債の利回り。
数値で見る
時点金利差
1977年1月-2.5%
1978年1月1.5%
1980年1月3.0%
1981年1月4.3%
1982年1月7.2%
1983年1月2.4%
1984年1月4.2%
1985年1月4.0%
1986年1月2.1%
1987年1月2.1%
1988年1月3.8%
1989年1月5.2%
1990年1月1.7%
1991年1月0.1%
1992年1月0.2%
1993年1月0.9%
1994年1月2.2%
1995年1月4.6%
1996年1月4.2%
1997年1月5.4%
1998年1月4.7%
1999年1月4.0%
2000年1月6.0%
2001年1月4.3%
2002年1月3.0%
2003年1月1.7%
2004年1月1.7%
2005年1月3.1%
2006年1月4.1%
2007年1月4.1%
2008年1月1.9%
2009年1月0.4%
2010年1月0.8%
2011年1月0.4%
2012年1月0.1%
2013年1月0.2%
2014年1月0.3%
2015年1月0.6%
2016年1月0.9%
2017年1月1.4%
2018年1月2.2%
2019年1月2.7%
2020年1月1.6%
2021年1月0.3%
2022年1月1.1%
2023年1月4.2%
2024年1月4.3%
2025年1月3.6%
2026年1月2.3%
2026年8月2.6%
時期ごとの「そろい方」:金利差の月々の変化とドル円の月々の変化1に近いほど、金利差が広がった月にドル円も上がった(円安)。0.3未満は、ほぼ関係がない。月次の変化どうしの相関。
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そろい方(−1〜1)
1976–840.11
1985–89-0.28
1990–950.12
1996–020.29
2003–070.39
2008–120.66
2012–150.21
2016–200.37
2021–240.73
2025–260.42
時期そろい方金利差1%あたりのドル円ドル円金利差
1976〜1984+0.11+0.4%299 → 248-1.6 → +4.1%
1985〜1989-0.28-2.1%254 → 144+4.0 → +1.8%
1990〜1995+0.12+1.2%145 → 102+1.7 → +4.8%
1996〜2002+0.29+3.0%106 → 122+4.2 → +1.8%
2003〜2007+0.39+4.0%119 → 112+1.7 → +2.4%
2008〜2012+0.66+9.1%108 → 79+1.9 → +0.2%
2012〜2015+0.21+6.8%81 → 122+0.2 → +1.0%
2016〜2020+0.37+4.3%118 → 104+0.9 → +0.3%
2021〜2024+0.73+7.3%104 → 154+0.3 → +3.6%
2025〜2026+0.42+5.2%156 → 159+3.6 → +2.6%

円を買う流れ・売る流れ(年ごと)

円の値段は、円を買いたい人と売りたい人の量でも決まる。国際収支のうち、実際に円と外貨を交換する流れだけを取り出すと、ここ数年は企業と個人の海外への投資が、貿易の黒字・赤字より大きい。2025年は-0.2兆円。

円の実需の中身(兆円)棒の上下の合計が黒い点(円の実需)。投資信託は2014年から。* はその年の途中まで。デジタル赤字や旅行は「モノとサービス」に入っている(内訳は下)。
数値で見る
モノとサービス所得のうち円に戻りうる分企業の海外投資(−)投資信託の外国投資(−)合計(円の実需)
1996+2+5-2—+5
1997+6+5-2—+9
1998+10+6-2—+13
1999+8+5-1—+12
2000+7+6-3—+10
2001+3+7-3—+7
2002+6+7-2—+11
2003+8+7-2—+13
2004+10+8-2—+16
2005+8+9-4—+14
2006+7+11-5—+13
2007+10+13-4—+19
2008+2+13-9—+6
2009+2+11-5—+8
2010+7+11-5—+13
2011-3+12-8—+1
2012-8+11-8—-5
2013-12+14-11—-10
2014-14+14-9-5-14
2015-3+15-12-14-13
2016+4+12-10-7-1
2017+4+13-12-60
20180+14-9-2+3
2019-1+14-18-3-8
2020-1+12-5-60
2021-2+14-9-6-4
2022-21+22-6-2-8
2023-10+20-13-6-8
2024-6+24-17-12-11
2025-4+25-14-70
2026*-2+16-8-7-1
年ドル円前年比モノとサービス所得(円に戻りうる分)企業の海外投資投資信託円の実需
2026*158.7+7.0%-2.0+15.9-7.7-6.9-0.7
2025149.6-1.2%-4.0+25.0-14.5-6.8-0.2
2024151.5+7.8%-5.9+23.8-17.1-11.5-10.8
2023140.5+6.9%-10.0+20.3-12.8-5.5-8.0
2022131.5+19.8%-21.1+21.7-6.0-2.4-7.8
2021109.8+2.8%-2.5+14.2-9.4-6.3-4.0
2020106.8-2.1%-0.9+12.4-4.9-6.1+0.5
2019109.0-1.3%-0.9+14.3-18.0-3.0-7.7
2018110.4-1.5%+0.1+13.8-9.3-2.0+2.6
2017112.1+3.1%+4.2+13.1-11.9-5.8-0.4
2016108.8-10.1%+4.4+12.1-9.9-7.2-0.7
2015121.0+14.3%-2.8+15.2-12.0-13.6-13.2
2014105.9+8.5%-13.5+13.9-9.1-4.8-13.5
201397.6+22.2%-12.3+13.7-11.3—-9.8
201279.8+0.1%-8.1+11.2-7.7—-4.6
201179.7-9.2%-3.1+11.7-7.5—+1.1
201087.8-6.2%+6.9+10.9-4.6—+13.1
200993.6-9.5%+2.1+10.6-4.8—+7.9
2008103.4-12.2%+1.9+12.7-8.6—+6.0

表は2008年から(兆円、+は円を買う流れ)。国際収支は日本銀行の月次(1996年〜)。

デジタル赤字と、訪日客

デジタル赤字と旅行収支(兆円)コンサルの内訳が取れるのは2014年から。* はその年の途中まで。
数値で見る
デジタル(使用料・IT・コンサル)旅行(訪日客の消費 − 日本人の海外旅行)
2014-2.10.0
2015-2.6+1.1
2016-2.7+1.3
2017-2.6+1.8
2018-2.8+2.4
2019-3.9+2.7
2020-3.8+0.6
2021-4.4+0.2
2022-4.7+0.5
2023-5.9+3.6
2024-6.9+6.1
2025-6.7+6.7
2026*-3.8+3.7

デジタル赤字は2014年の-2.1兆円から2025年の-6.7兆円へ広がった。一方で訪日客による旅行収支は+6.7兆円で、ほぼ同じ大きさ。デジタル赤字だけで円安を説明するのは難しい。

黒字なのに、円に戻らないお金

海外からの所得の中身(兆円)第一次所得収支。「円に戻りうる分」も、証券の利子や配当はそのまま外貨で再投資されることが多く、全部が円に替わるわけではない。
数値で見る
円に戻りうる分(配当・利子など)海外の子会社に残した利益
199660
199760
199870
199960
200071
200180
200270
200381
200492
2005102
2006122
2007152
2008140
2009121
2010122
2011132
2012122
2013153
2014164
2015174
2016145
2017156
2018166
2019166
2020154
20211610
20222411
20232412
20242911
20253111
2026*186

日本の経常黒字の大部分は、モノの輸出ではなく海外からの所得になった。ただしその所得のうち11兆円(直近12か月)は海外の子会社に残した利益で、統計の上では黒字でも、円を買う力にはならない。

2026年9月29日 12:04更新・実効為替は2026年7月まで・国際収支は2026年7月まで