円の実力(1964年〜)円安 57
今 62
180 円高

安すぎた通貨は、その後どうなったか

このページの要点

  1. 円が今と同じくらい安かったのは、1ドル360円の1960年代。その後の25年で、円の実力は2.6倍になった。いちばん安い時期(下から2割)の月から5年後を見ると、平均+22%で、どの月から見ても上がっていた。
  2. ほかの国でも同じことが起きた。自国の平均より3割以上安くなったのは、日本のほかオーストラリア(2001年)、韓国(1998年)、メキシコ(1983年)。通貨危機の韓国のウォンは、5年で実力が+51%戻った。26か国をまとめると、3割以上安かった通貨は5年後に平均+31%、2〜3割安かった通貨は+17%。
  3. 戻り方は為替だけではない。2割以上安かった通貨の5年後の実力の戻り+16%のうち、為替そのものは+9%、残りは物価の差(その国の物価が相手より速く上がった分)。為替で見ても上がったのは74%。
  4. 今の日本は自国の平均より39%安く、26か国でいちばん離れている。これほど離れた通貨の例は少なく、過去の平均がそのまま当てはまるとは限らない。

日本:安かったときの5年後

円の実力(実質実効レート)が低かった月と高かった月で、その後5年の動きを比べた。安いほど、その後は上がる方向だった。

円の実力の高さ(5段階)別の、5年後の円の実力の変化左ほど、その月の円が歴史的に安かった。1964年からの月を実力の高さで5つに分け、それぞれの5年後の変化を平均した。
数値で見る
1964年から変動相場の1973年から
いちばん安い2割+22%+19%
安い+14%+4%
中くらい+3%+3%
高い-4%-8%
いちばん高い2割-11%-11%
その月の円5年後上がった割合月数
いちばん安い2割57〜79+22%100%101
安い79〜97+14%82%140
中くらい97〜112+3%49%150
高い112〜130-4%39%150
いちばん高い2割130〜180-11%11%150

26か国:自国の平均からの離れ方と、5年後

日本だけでは例が少ないので、1964年からデータのある26の国・地域の「通貨の実力」(物価の違いまで入れた強さ。国際決済銀行の計算)で、自国の平均からどれだけ安かったかと、その5年後を調べた。

自国の平均より何%安かった(高かった)か別の、5年後の実力の変化(平均)青は、あとから分かった長い平均と比べた場合。橙は、その時点で分かっていた過去20年の平均と比べた場合(後知恵なし)。どちらも同じ向き。
数値で見る
1964年からの平均と比べてその時点までの過去20年の平均と比べて
-30%より安い+31%+49%
-30%〜-20%+17%+15%
-20%〜-10%+9%+6%
-10%〜10%0%0%
10%〜20%-6%-3%
+20%より高い-12%-8%
平均との差5年後上がった割合国の数
-30%より安い+31%99%4
-30%〜-20%+17%85%17
-20%〜-10%+9%75%24
-10%〜10%0%51%26
10%〜20%-6%21%26
+20%より高い-12%14%16

3割以上安かった例:オーストラリア、日本、韓国、メキシコ。

為替で戻るのか、物価で戻るのか

安すぎた通貨の「安さ」が消える道は2つある。為替そのものが動くか、その国の物価が上がるか。2割以上安かった通貨の過去の例では、5年で戻った+16%のうち、為替で戻ったのが+9%、物価で戻ったのが+6%だった。下の例で、2つの道の違いを見てほしい。

「物価で戻る」とは? ハンバーガーで考える

今

同じハンバーガーが、日本では500円、米国では5ドル(=787円)。日本の方が36%安い。これが「円が安い」ということ。

戻り方A:為替で戻る

1ドルが100円になる。米国の5ドルも500円になり、値段がそろう。

→ 米国株などドルで持つ資産は、円で見て36%目減りする。

戻り方B:物価で戻る

1ドルは157円のまま。日本のハンバーガーが787円に値上がりし(給料も上がる)、値段がそろう。

→ ドルで持つ資産は目減りしない。代わりに、円の預金で買えるものが減る。

実際にはAとBが混ざって起きる。過去の26か国では、戻った分のおよそ半分が為替、残りが物価だった。どちらで戻るかで、外国の資産を持つ人の損得は大きく変わる。

外国の資産を持つ日本人にとって効くのは為替の方。「円は戻る」が物価の上昇で起きるなら、外国の資産の円での値段は目減りしない。日本の過去の節目では、どちらもあった。

時期出来事実力(実質)為替(名目)
1971年1月〜1976年1月固定相場の終わり(1ドル360円から)+28%+15%
1985年1月〜1990年1月プラザ合意のあと+22%+39%
1990年1月〜1995年4月バブル崩壊から超円高へ+51%+68%
2012年10月〜2015年6月アベノミクスの円安-31%-32%
2020年12月〜2026年7月コロナ後の円安-36%-32%

実力・為替とも、27の国・地域の通貨に対する円の値打ち(BIS の実効レート)。上がるほど円高。

今、自国の平均からどれだけ離れているか

各国の通貨の実力:1964年からの平均との差橙が日本。
数値で見る
平均との差
日本-39%
スウェーデン-29%
韓国-19%
カナダ-18%
ノルウェー-13%
フランス-12%
英国-7%
フィンランド-7%
イタリア-4%
台湾-4%
ドイツ-2%
デンマーク+1%
アイルランド+1%
ギリシャ+2%
香港+3%
ベルギー+6%
メキシコ+7%
ニュージーランド+8%
オーストラリア+9%
ポルトガル+9%
オランダ+11%
スペイン+12%
米国+14%
オーストリア+16%
シンガポール+17%
スイス+19%

購買力平価(物価に見合った為替の水準)の研究では、通貨の実力のずれは3〜5年で半分ほど戻るというのが通説(Rogoff (1996) The Purchasing Power Parity Puzzle, Journal of Economic Literature 34(2))。このサイトの結果もその範囲に近い。ただし戻る時期は読めず、ずれが広がり続けた例もある。

2026年9月29日 12:04更新・実効為替は2026年7月まで・国際収支は2026年7月まで