安すぎた通貨は、その後どうなったか
このページの要点
- 円が今と同じくらい安かったのは、1ドル360円の1960年代。その後の25年で、円の実力は2.6倍になった。いちばん安い時期(下から2割)の月から5年後を見ると、平均+22%で、どの月から見ても上がっていた。
- ほかの国でも同じことが起きた。自国の平均より3割以上安くなったのは、日本のほかオーストラリア(2001年)、韓国(1998年)、メキシコ(1983年)。通貨危機の韓国のウォンは、5年で実力が+51%戻った。26か国をまとめると、3割以上安かった通貨は5年後に平均+31%、2〜3割安かった通貨は+17%。
- 戻り方は為替だけではない。2割以上安かった通貨の5年後の実力の戻り+16%のうち、為替そのものは+9%、残りは物価の差(その国の物価が相手より速く上がった分)。為替で見ても上がったのは74%。
- 今の日本は自国の平均より39%安く、26か国でいちばん離れている。これほど離れた通貨の例は少なく、過去の平均がそのまま当てはまるとは限らない。
日本:安かったときの5年後
円の実力(実質実効レート)が低かった月と高かった月で、その後5年の動きを比べた。安いほど、その後は上がる方向だった。
数値で見る
| 1964年から | 変動相場の1973年から | |
|---|---|---|
| いちばん安い2割 | +22% | +19% |
| 安い | +14% | +4% |
| 中くらい | +3% | +3% |
| 高い | -4% | -8% |
| いちばん高い2割 | -11% | -11% |
| その月の円 | 5年後 | 上がった割合 | 月数 |
|---|---|---|---|
| いちばん安い2割57〜79 | +22% | 100% | 101 |
| 安い79〜97 | +14% | 82% | 140 |
| 中くらい97〜112 | +3% | 49% | 150 |
| 高い112〜130 | -4% | 39% | 150 |
| いちばん高い2割130〜180 | -11% | 11% | 150 |
26か国:自国の平均からの離れ方と、5年後
日本だけでは例が少ないので、1964年からデータのある26の国・地域の「通貨の実力」(物価の違いまで入れた強さ。国際決済銀行の計算)で、自国の平均からどれだけ安かったかと、その5年後を調べた。
数値で見る
| 1964年からの平均と比べて | その時点までの過去20年の平均と比べて | |
|---|---|---|
| -30%より安い | +31% | +49% |
| -30%〜-20% | +17% | +15% |
| -20%〜-10% | +9% | +6% |
| -10%〜10% | 0% | 0% |
| 10%〜20% | -6% | -3% |
| +20%より高い | -12% | -8% |
| 平均との差 | 5年後 | 上がった割合 | 国の数 |
|---|---|---|---|
| -30%より安い | +31% | 99% | 4 |
| -30%〜-20% | +17% | 85% | 17 |
| -20%〜-10% | +9% | 75% | 24 |
| -10%〜10% | 0% | 51% | 26 |
| 10%〜20% | -6% | 21% | 26 |
| +20%より高い | -12% | 14% | 16 |
3割以上安かった例:オーストラリア、日本、韓国、メキシコ。
為替で戻るのか、物価で戻るのか
安すぎた通貨の「安さ」が消える道は2つある。為替そのものが動くか、その国の物価が上がるか。2割以上安かった通貨の過去の例では、5年で戻った+16%のうち、為替で戻ったのが+9%、物価で戻ったのが+6%だった。下の例で、2つの道の違いを見てほしい。
「物価で戻る」とは? ハンバーガーで考える
今
同じハンバーガーが、日本では500円、米国では5ドル(=787円)。日本の方が36%安い。これが「円が安い」ということ。
戻り方A:為替で戻る
1ドルが100円になる。米国の5ドルも500円になり、値段がそろう。
→ 米国株などドルで持つ資産は、円で見て36%目減りする。
戻り方B:物価で戻る
1ドルは157円のまま。日本のハンバーガーが787円に値上がりし(給料も上がる)、値段がそろう。
→ ドルで持つ資産は目減りしない。代わりに、円の預金で買えるものが減る。
実際にはAとBが混ざって起きる。過去の26か国では、戻った分のおよそ半分が為替、残りが物価だった。どちらで戻るかで、外国の資産を持つ人の損得は大きく変わる。
外国の資産を持つ日本人にとって効くのは為替の方。「円は戻る」が物価の上昇で起きるなら、外国の資産の円での値段は目減りしない。日本の過去の節目では、どちらもあった。
| 時期 | 出来事 | 実力(実質) | 為替(名目) |
|---|---|---|---|
| 1971年1月〜1976年1月 | 固定相場の終わり(1ドル360円から) | +28% | +15% |
| 1985年1月〜1990年1月 | プラザ合意のあと | +22% | +39% |
| 1990年1月〜1995年4月 | バブル崩壊から超円高へ | +51% | +68% |
| 2012年10月〜2015年6月 | アベノミクスの円安 | -31% | -32% |
| 2020年12月〜2026年7月 | コロナ後の円安 | -36% | -32% |
実力・為替とも、27の国・地域の通貨に対する円の値打ち(BIS の実効レート)。上がるほど円高。
今、自国の平均からどれだけ離れているか
数値で見る
| 平均との差 | |
|---|---|
| 日本 | -39% |
| スウェーデン | -29% |
| 韓国 | -19% |
| カナダ | -18% |
| ノルウェー | -13% |
| フランス | -12% |
| 英国 | -7% |
| フィンランド | -7% |
| イタリア | -4% |
| 台湾 | -4% |
| ドイツ | -2% |
| デンマーク | +1% |
| アイルランド | +1% |
| ギリシャ | +2% |
| 香港 | +3% |
| ベルギー | +6% |
| メキシコ | +7% |
| ニュージーランド | +8% |
| オーストラリア | +9% |
| ポルトガル | +9% |
| オランダ | +11% |
| スペイン | +12% |
| 米国 | +14% |
| オーストリア | +16% |
| シンガポール | +17% |
| スイス | +19% |
購買力平価(物価に見合った為替の水準)の研究では、通貨の実力のずれは3〜5年で半分ほど戻るというのが通説(Rogoff (1996) The Purchasing Power Parity Puzzle, Journal of Economic Literature 34(2))。このサイトの結果もその範囲に近い。ただし戻る時期は読めず、ずれが広がり続けた例もある。
2026年9月29日 12:04更新・実効為替は2026年7月まで・国際収支は2026年7月まで