専門家・機関の見方
シンガポールの銀行 DBS、北欧の銀行 Nordea、みずほ銀行のエコノミスト、日本総合研究所などが円をどう見ているかを要約し、1件ずつこのサイトのデータと突き合わせた。判定は「データがどちらを向いているか」で、先の予想ではない。数字は毎朝の更新で入れ替わる。
「円は安すぎる。いずれ戻る」
DBS は、円は自社の均衡レートの推計で見て割安のまま(介入で割安さは縮んだ)とする。Nordea は、OECD の購買力平価(通貨の値打ちは物価に見合った水準に戻るという考え)とビッグマック指数で円は大きく割安とみる。
データで見ると:おおむね支持。ただし戻り方と時期は読めない- 円の実力は1970年以降で最低の水準(62.0)。
- 26か国で自国の平均より3割以上安かった通貨は、5年後に平均+31%(99%で上昇)。ただし例は4か国だけ。
- 戻りの一部は物価の差で起きる(2割以上安かった例では、実力の戻り+16%のうち為替は+9%)。為替が戻らなくても「実力」は戻りうる。
出典:FXStreet「Japanese Yen: Interventions signal valuation shift – DBS」(2026年8月12日) / FXStreet「Japanese Yen: Weak currency and cheap burgers – Nordea」(2026年8月28日)
「日米の金利差が縮めば円高になる」
Nordea は、日銀の利上げなどで金利差が縮まらない限り円安は続くとする。DBS は、日銀が利上げしやすくなったことを円高の材料に挙げる。
データで見ると:ここ数年は当たっている。長い歴史では当たらない時期が多い- 金利差とドル円の月々の動きがはっきりそろったのは2008〜2012年、2021〜2024年だけ。
- 1976年からの全期間では、月々の変化のそろい方は0.15。1985〜89年は、月々の動きが逆向き(そろい方がマイナス)だった。
- 今の2年金利差は2.56%(1年前より-0.31%)。
出典:FXStreet「Japanese Yen: Weak currency and cheap burgers – Nordea」(2026年8月28日) / FXStreet「Japanese Yen: Policy-regime shift backs JPY against US Dollar – DBS」(2026年9月14日)
「デジタル赤字で、円安は構造的に続く」
「米国のプラットフォーマーへの依存をやめられない以上、デジタル収支の赤字は拡大し、円安圧力となり続ける」。
データで見ると:デジタル赤字だけでは説明できない- デジタル赤字は直近12か月で-6.5兆円。確かに広がっている。
- 一方、訪日客の旅行収支が+6.2兆円で、ほぼ打ち消している。
- 円を売る流れで大きいのは、企業の海外投資(15.1兆円)と投資信託の外国投資(10.7兆円)。
出典:唐鎌大輔「円安長期化に悩む『仮面の黒字・債権国』日本、戻らぬ円とデジタル小作人の末路」ダイヤモンド・オンライン(2024年2月20日)
「日本は黒字の国だから、円は本来強い」
日本の大きな黒字は本来、円高を支えるはずだが、金利差がそれを打ち消しているとする。反対の立場は唐鎌大輔(みずほ銀行)の「仮面の黒字」論:黒字の多くは円に戻っていない。
データで見ると:黒字の多くは円に戻っていない- 経常収支は直近12か月で+35.8兆円の黒字。中身は輸出ではなく、海外からの所得(42.1兆円)。
- うち11.2兆円は海外の子会社に残した利益で、円に替わらない。
- 企業と投資信託の海外への投資を差し引くと、円の実需は-1.2兆円。
出典:FXStreet「Japanese Yen: Weak currency and cheap burgers – Nordea」(2026年8月28日) / 唐鎌大輔「円安長期化に悩む『仮面の黒字・債権国』日本、戻らぬ円とデジタル小作人の末路」ダイヤモンド・オンライン(2024年2月20日)
「新NISAで、個人の円売りが続く」
新NISAによる海外への投資は年0.7兆〜3.9兆円で、2027年にかけてドル円を1〜6円弱押し上げる(円安にする)と試算。
データで見ると:流れは確かにある。大きさは貿易赤字と同じくらい- 投資信託の外国投資は2015年に13.6兆円で、統計の始まった2014年以降で最大。直近12か月は10.7兆円。
- 同じ12か月のモノとサービスの収支は-2.0兆円で、それより大きい。
- 投資信託の数字には NISA 以外の分も入る。個人が外国株から日本株や預金に戻せば、逆向きの流れになる。
「金利差と財政不安で、1ドル200円もありうる」
欧米との大きな金利差と日本の財政への不安から、1ドル=200円を最悪のシナリオとして意識し始めたトレーダーがいると報じた。
データで見ると:データでは起きにくい側。ただし前例の少ない水準- 200円は今の157円からさらに27%の円安。円の実力はすでに1970年以降で最低。
- 26か国で自国の平均より3割以上安かった通貨が、5年後にさらに下がっていたのは1%。
- 国債の海外の持ち分は7.9%で、海外の投げ売りが起きにくい形。一方で日銀が47%を持ち、買う量を減らしている。
2026年9月29日 12:04更新・実効為替は2026年7月まで・国際収支は2026年7月まで