過去の検証

投資が多い業界は、本当にその後負けたのか

このページの要点

  1. 37業界・1947〜2019年。自分の過去20年より投資が多かった年のあと、株は5年間で市場に年1.3%負けた。控えた年のあとは年0.7%勝った。
  2. 差は1970〜89年(年2.8%分)と1990〜2019年(年2.1%分)ではっきりしていた。1947〜69年は小さく、偶然でも出る大きさだった。
  3. 資源・重厚長大の業界でも、技術の業界(半導体・通信・ソフト・情報サービス)ではさらに強く成り立った。料金を規制で決められる電力・ガスでは効かなかった。
  4. 2011〜2020年を会社ごとに確かめると(SEC の決算)、業界の中では、はっきり出たのは金鉱山・銅・石油・ガス・電力設備(作る側)・半導体(工場を持つ会社)、出なかったのは電力会社(買う側)・データセンター(ハイパースケーラー)。

どう測ったか

出典:BEA / French Data Library

期間ごとの結果

その後5年の、市場との差(年率、%)左の棒:投資が多かった年のあと。右の棒:控えた年のあと。
期間多かった年のあと(年率)控えた年のあと(年率)差多い側が悪かった業界年(同じ年の業界どうし)偽の組み合わせで同じ以上の差
1947〜2019年-1.3%920+0.7%974-2.0%26 / 3751 / 730.1%
1947〜1969年-0.9%412+0.5%136-1.4%16 / 3011 / 2310.7%
1970〜1989年-1.2%200+1.6%350-2.8%24 / 3417 / 200.0%
1990〜2019年-1.9%308+0.2%488-2.1%24 / 3623 / 300.0%

数字の下の小さな数は、業界×年の件数。「偽の組み合わせ」:業界ごとに投資の並びを5年以上ずらして株の成績と組み直すことを1,000回行い(それぞれの上下の癖は保つ)、本物と同じ以上に悪い差が出た割合。偶然だけでこの結果が出る頻度にあたる。

定義を変えても同じか

選び方を変えたときの差(多かった年のあと − 控えた年のあと、年率)。マイナスなら、投資が多いほうがその後悪かった。

1947〜2019年1947〜1969年1970〜1989年1990〜2019年
上の定義-2.0%-1.4%-2.8%-2.1%
研究開発とソフトも投資に入れる-2.0%-1.6%-2.5%-2.0%
過去20年でなく10年と比べる-1.6%-0.5%-2.6%-1.4%
その後5年でなく3年-2.0%+0.2%-4.0%-2.1%
その後5年でなく7年-1.5%-1.6%-1.7%-1.5%

どの定義でも、全期間と1970年以降の差はマイナス。1947〜69年は3年で見ると向きが逆になり、この時期の結果が当てにならないことをもう一度示している。

どんな業界で効くか

1947〜2019年1947〜1969年1970〜1989年1990〜2019年
資源・重厚長大(15業界)-2.2%10/15-0.8%7/14-0.4%8/14-4.7%12/15
技術(5業界)-6.6%4/5-6.4%3/4-8.2%4/4-4.2%4/4
消費・金融・サービス(17業界)-0.7%12/17-0.7%6/12-3.8%12/16+1.4%8/17

小さな数:投資が多いほうが悪かった業界 / 両方の年がある業界。差がいちばん大きいのは技術の業界。半導体・通信・ソフトは設備を速く増やせ、増えると値段も速く下がる。資源・重厚長大は1990年以降にはっきり出ている。

業界ごと

投資が多かった年のあとと控えた年のあとの差(年率、1947年〜、%)0より左なら、投資が多いほうがその後悪かった。
数値で見る
業界差(年率%)
ソフトウェア-24.8
繊維-10.1
医療サービス-7.8
航空機・船・鉄道車両-6.0
金属製品-5.4
半導体・電子部品-5.1
食品-4.7
通信-4.7
衣料-4.6
紙-4.6
情報サービス-4.2
石油・ガス-3.7
鉱業-3.2
化学-2.8
飲料・たばこ-2.4
不動産-2.4
証券・資産運用-2.2
娯楽-2.1
外食-2.1
銀行-1.8
運輸-1.8
小売-1.7
保険-1.6
ゴム・プラスチック-1.4
電気機器-0.9
印刷・出版-0.1
日用品など0.0
医療機器0.0
鉄鋼・金属0.2
電力・ガス0.2
自動車0.5
機械0.6
卸売1.7
建材1.8
農業2.1
個人向けサービス6.5
建設7.1

37業界中26業界で同じ向き。逆だったのは日用品など・医療機器・鉄鋼・金属・電力・ガス・自動車・機械・卸売・建材・農業・個人向けサービス・建設。

もう1つの確認:会社ごと(2011〜20年)

このサイトの会社でも同じことをした。各社の SEC の決算の設備投資÷減価償却を、その会社のそれまでの年と比べ、その後5年の株価を S&P 500 と比べた(2011〜2020年、会社×年で297件)。

業界多かった年のあと(年率)控えた年のあと(年率)差
金鉱山-5.2%7-1.4%20-3.8%
銅+1.3%6+8.1%3-6.8%
石油・ガス-11.9%11-6.6%51-5.3%
電力設備(作る側)-2.3%6+9.8%11-12.1%
電力会社(買う側)-3.3%27-4.5%23+1.2%
半導体(工場を持つ会社)+2.6%30+6.3%11-3.6%
データセンター(ハイパースケーラー)+5.3%12+5.4%10-0.1%
全体-1.2%99-1.7%129+0.4%

業界の中で比べると、はっきり出たのは(年2%分以上)金鉱山・銅・石油・ガス・電力設備(作る側)・半導体(工場を持つ会社)、出なかったのは電力会社(買う側)・データセンター(ハイパースケーラー)。全部をまとめると差は年+0.4%になるが、もともとの成績が違う業界どうしが混ざるため(業界の検証は、各業界を自分の過去と比べてこれを避けている)。この確認を業界の検証ほどは信じない理由が3つある。10年・1回のサイクルしか入っていないこと。1社の株は自分の投資以外の理由でも大きく動くこと。今ある会社を選んでいるので、投資しすぎて消えた会社が入っていないこと。資本サイクルはもともと業界全体の供給の話で、1社の話ではない。

出典:SEC EDGAR / Yahoo Finance

この検証で言えること・言えないこと

5年の期間は重なり合うので、75年でも1業界あたり独立した5年はおよそ15回しかない。だから件数そのものより、偽の組み合わせとの比較を頼りにした。検証が支えるのは、平均で年に数%という傾向で、売り買いの時期を決める規則ではない。1998〜2000年のように、投資が多いまま何年も株が上がり続けることもある。このサイトでは比率を業界ごとの警告灯として使い、需要の側から見るほかのサイトの見立てと並べて確かめる。

近い話として、総資産を速く増やした会社はその後の株の成績が低いという研究がよく知られている(Cooper ほか、2008年)。また『Capital Returns』の編者は、外れた手紙は本から外したと自ら書いている。実例を読むだけでなく、こうして確かめ直す理由の1つ。

出典:Cooper ほか(2008) / Capital Returns

このページは情報の整理で、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。データは各公表元のもので、誤りや遅れがありえます。投資の判断はご自身で。

2026年9月30日 01:15更新・会社の決算は2026年8月まで・業界の長い歴史は2024年まで