金高で上がるはずの金鉱株ランキング

順位は「金が10%(今なら+421ドル)上がったら、株価は理論上何%上がるか」の順で、直近の決算から計算した。コストは金価格ではほとんど変わらないので、利ざやが薄い会社ほど利益の伸びが大きく、借入があると株主の取り分はさらに大きく動く。隣に、実際に直近2年で金に対してどれだけ動いたか(ベータ)を並べた。レバレッジの大きい会社は金が下がると真っ先に苦しくなるので、質と割安さも並べた。

順位会社種類金+10%で株価は理論上実際の動き(ベータ)利ざやの弾性値AISC利ざや/oz質増分FCF利回り(金+10%)織り込み金価格割引率埋蔵量の年数弱点
1B2ゴールドBTG・中堅中堅+22%+21%2.2倍$2,356$1,85156+3.4%———国のリスク
2アイアムゴールドIAG・中堅中堅+21%+22%2.1倍$2,271$1,93674+1.9%$5,3917.4%10年国のリスク
3エクイノックス・ゴールドEQX・中堅中堅+20%+20%2.0倍$2,175$2,03283+1.8%$4,2036.7%21年国のリスク
4エルドラド・ゴールドEGO・中堅中堅+19%+17%1.8倍$1,926$2,28145+1.4%$4,5236.0%23年借入が重い
5ハーモニー・ゴールドHMY・中堅中堅+19%+23%1.9倍$2,195$2,01256+3.0%$3,2927.0%20年なし
6アングロゴールド・アシャンティAU・大手大手+18%+22%1.8倍$2,039$2,16868+1.6%$5,1147.2%13年なし
7エンデバー・マイニングEDV LN・中堅中堅+17%+17%1.7倍$1,907$2,30065+2.3%$3,9667.9%14年国のリスク
8ゴールド・フィールズGFI・大手大手+17%+21%1.7倍$1,893$2,31487+1.9%$3,7076.2%19年なし
9キンロス・ゴールドKGC・大手大手+16%+19%1.7倍$1,821$2,38667+1.9%$4,5036.4%10年なし
10ニューモントNEM・大手大手+15%+16%1.5倍$1,621$2,58682+1.2%$4,4186.1%22年なし
11アグニコ・イーグルAEM・大手大手+14%+18%1.5倍$1,459$2,74889+1.0%$5,1675.0%16年なし
12アラモス・ゴールドAGI・中堅中堅+14%+19%1.5倍$1,728$2,47986+0.9%$4,2725.5%30年ヘッジあり
13エボリューション・マイニングEVN AU・中堅中堅+13%+15%1.3倍$1,198$3,009100+1.0%$4,6645.0%17年銅の比率が高い
14ランディン・ゴールドLUG CN・中堅中堅+13%+20%1.3倍$1,176$3,03152+0.9%$7,0387.0%12年なし
15ウィートン・プレシャス・メタルズWPM・ロイヤルティロイヤルティ+12%+17%1.1倍$568$3,63954+0.5%———なし
16ノーザン・スターNST AU・大手大手+11%+14%1.1倍$1,861$2,34675+1.3%$3,3945.0%18年ヘッジあり
17バリックB・大手大手+11%+15%1.2倍$1,866$2,34184+0.8%$4,4176.3%28年なし
18ロイヤル・ゴールドRGLD・ロイヤルティロイヤルティ+11%+14%1.1倍$871$3,33656+0.6%———なし
19フランコ・ネバダFNV・ロイヤルティロイヤルティ+9%+12%0.9倍$347$3,86079+0.3%———なし

「理論上」は決算からの計算:金が10%上がると1オンスあたりの利ざやが何%増えるか(ヘッジ・副産物・価格連動のロイヤルティを調整)に、純負債の分の上乗せ(企業価値÷時価総額)を掛けたもの。市場が今と同じ倍率で評価し続ける前提。「実際の動き」は直近2年の株価の対金ベータ×10%。質は埋蔵量・財務・国・見通しの達成・コストの5項目の0〜100点。

レバレッジと質

金+10%での株価の理論上の上昇(横)と質の点数(縦)色と形は会社の種類。名前は一部の点だけに付けた。ほかは点に触れると出る。

金価格を変えてみる

金価格を選ぶと、その価格でのキャッシュフロー利回りの順に並べ替える。金が高いほどコストの高い(レバレッジの大きい)会社が上がり、今より安いと真っ先に落ちる。

会社この金価格でのFCF利回りFCFの増減利ざや/oz

試算のキャッシュフロー=年間生産量×(金価格−AISC。ヘッジ・副産物・価格連動のロイヤルティを調整)×(1−税率)を時価総額で割ったもの。新しい鉱山への投資と利払いを含まないので、実際に出てくるお金より大きい。比べるための数字で、予想ではない。機関予想は「金の前提ウォッチ」の予想DBから(直近6か月に出た各機関の一番新しい目標)。 金の前提ウォッチの価格予想

種類ごとの中央値

種類金+10%で株価は理論上実際の動き利ざやの弾性値質織り込み金価格
大手+15%+18%1.5倍82$4,418
中堅+19%+20%1.8倍65$4,398
ロイヤルティ+11%+14%1.1倍56—

鉱山株アナリストが見る点

  1. AISC(全維持コスト)

    金1オンスを掘り続けるのにかかる費用。操業費・ロイヤルティ・維持のための設備投資・管理費を含み、新しい鉱山への投資は含まない。金価格−AISC が1オンスあたりの利ざや。会社ごとに定義が少しずつ違い、銅などの副産物の売上を差し引くか(副産物控除)でも大きく変わる。

  2. 利ざやの弾性値

    金価格が1%上がると、1オンスあたりの利ざやが何%増えるか。金4,000ドル・AISC 2,000ドルなら利ざやは2,000ドルで、金が1%(40ドル)上がると利ざやは2%増える(2倍)。AISC 3,000ドルなら4倍。コストの高い会社ほど大きい。

  3. 金+10%で株価は理論上何%上がるか

    利ざやの弾性値×10%に、借入の分の上乗せ(企業価値÷時価総額)を掛けたもの。市場が今と同じ倍率でキャッシュフロー(または NAV)を評価し続けるなら、企業価値は利ざやと同じ割合で増え、借入は変わらないので株主の取り分はさらに大きく動く。このサイトのランキングはこの数字の順。実際の株価は、ほかの材料(銀・銅の価格、市場全体、会社ごとの出来事)でも動くので、隣の「実際の動き」(過去2年のベータ)と比べて見る。

  4. 増分FCF利回り

    金が10%上がったとき、年間の税引き後キャッシュフローがどれだけ増えるかを、時価総額に対する割合で表す。株価の動きの大きさではなく、「同じ金高の恩恵を、株価に比べてどれだけ安く買えるか」を見る割安さの物差し。

  5. 埋蔵量の年数と前提の金価格

    埋蔵量÷年間生産量。何年掘り続けられるか。埋蔵量は会社が決めた金価格(多くは1,500〜2,500ドル)で採算が合う分だけを数えるので、今の金価格なら実際に採算の合う量はもっと多い。前提が低い会社ほど、金高で埋蔵量が増える余地がある。

  6. ヘッジ

    将来の生産を今の価格で売る約束(先物・フォワード)をしていると、その分は金が上がっても恩恵がない。借入の条件でヘッジを求められた会社に多い。大手はほぼヘッジしない。

  7. 副産物

    銅・銀・亜鉛なども一緒に掘る会社は、金だけの会社より金価格への感応度が下がる。副産物の売上をAISCから差し引いて低く見せている場合、その金属の価格が下がるとAISCが上がる。

  8. 国のリスク

    マリ・ブルキナファソ・ニジェールでは軍事政権が鉱業法を変え、鉱山の操業停止や金の差し押さえが起きた。金高のときほど、国は取り分を増やそうとする(鉱業税・ロイヤルティの引き上げ)。

  9. 見通しの達成

    年初に出した生産量とコストの見通しを守れたか。守れない会社は、金高の恩恵を操業の問題で取りこぼしやすく、市場も割り引いて見る。

  10. 織り込み金価格

    今の企業価値(時価総額+純負債)を、埋蔵量がなくなるまでの税引き後の利ざやで回収するには、金がいくらであればよいか。割引率は実質5%に国のリスクの上乗せ(中リスク+2%、高リスク+5%)。5%は貴金属のアナリストが安定した国の操業資産のNAVに一般に使う実質の率で(CIBC はトルコの資産に+2%の7%を使った)、金鉱山の事業化調査も税引き後NPVを5%で出すのがふつう。8〜10%は企業の資本コスト(WACC)で割り引く場合や、銅などのベースメタル・開発段階の案件で使われる。今の金価格より低ければ、株価は今の金価格を織り込み切っていない。埋蔵量の外の資源量を入れていないので、資源量の多い会社ほど高めに出る。

  11. ロイヤルティ・ストリーミング

    鉱山に資金を出す代わりに、生産の一部を安く買う権利(ストリーム)や売上の一部(ロイヤルティ)を持つ会社。鉱山を操業しないのでコスト高の影響を受けにくい代わりに、金価格へのレバレッジは小さい。下がる局面で強く、上がる局面では生産会社に負けやすい。

質の点数と弱点の印

質の点数は次の5項目(各0〜1)の平均を100点満点にしたもの(3項目以上そろった会社だけ):

投資助言ではない。ランキングは前提を置いた金価格への感応度で、どの株を買うべきかを示すものではない。

2026年9月28日 15:53 更新・株価は2026年9月28日まで