結論

  1. 2021〜22年時点の上場企業3,860社のうち、約4年のあいだにTOB・MBOで買収されたのは359社。11社に1社。
  2. 買収された会社を分けたのは「誰が株を持っているか」だった:最大の事業会社株主の割合、支配株主がいる(法人が50%超を保有)、アクティビストの大量保有(過去2年)。あわせて、会社の大きさ(とても大きな会社は買収されにくい)。
  3. 全体で差がなかったのは:ネットキャッシュ÷時価総額、PBR(期末の株価÷1株純資産)、役員の持株割合、創業家(個人と資産管理会社)の割合。「割安な株価」や「厚い現金」は、それだけでは買収されやすさを示さなかった(ただし買い手の型ごとに見ると効いていたものがある。下の各項目に書いた)。
  4. この特徴で並べると、ある程度は当たる。点数の上位10%の会社は5社に1社(21.8%)が買収され、買収された会社全体の23%がこの上位10%に入っていた。

2021年9月27日〜2022年9月26日に各上場企業が出した最初の有価証券報告書から、その時点の特徴を取り、提出より後にTOB・MBOの対象になったかを今日まで追った。使ったのはその報告書の時点で分かっていたことだけなので、買収の「前に」あった特徴の検証になっている。

効いた特徴

その特徴があった会社のうち、その後に買収された割合。棒の目盛りはすべて同じ。

最大の事業会社株主の割合

最大の事業会社株主の割合が50%以上の会社は、4社に1社(26.5%)が買収された。全上場企業の11社に1社の2.9倍。多くは親会社による完全子会社化(14.5%)。

10%未満5.8%1,929社中111社
10〜20%5.8%704社中41社
20〜33%11.6%524社中61社
33〜50%17.1%428社中73社
50%以上26.5%275社中73社

縦線は全上場企業の平均(9.3%)

買い手の型ごとの内訳を見る
社数対象対象率親会社MBOファンド事業会社
10%未満1,9291115.8%0.4%1.9%1.1%2.3%
10〜20%704415.8%0.9%2.1%1.1%1.4%
20〜33%5246111.6%3.4%2.5%1.9%3.4%
33〜50%4287317.1%6.3%5.1%2.3%3.3%
50%以上2757326.5%14.5%0.7%2.9%8.0%

支配株主がいる(法人が50%超を保有)

支配株主(法人が50%超)がいる会社は、5社に1社(21.4%)が買収された。全上場企業の11社に1社の2.3倍。多くは親会社による完全子会社化(11.4%)。

あり21.4%378社中81社
なし8.0%3,482社中278社

縦線は全上場企業の平均(9.3%)

買い手の型ごとの内訳を見る
社数対象対象率親会社MBOファンド事業会社
あり3788121.4%11.4%1.1%2.4%6.3%
なし3,4822788.0%1.6%2.4%1.4%2.4%

時価総額

時価総額が5000億円以上の会社は4.2%(24社に1社)しか買収されず、平均の0.5倍。大きな会社は買収されにくい。

100億円未満10.0%1,085社中109社
100〜500億円10.9%1,170社中127社
500億〜1000億円11.7%332社中39社
1000億〜5000億円6.8%456社中31社
5000億円以上4.2%237社中10社

縦線は全上場企業の平均(9.3%)

買い手の型ごとの内訳を見る
社数対象対象率親会社MBOファンド事業会社
100億円未満1,08510910.0%2.8%1.8%1.2%4.1%
100〜500億円1,17012710.9%2.4%3.6%1.6%3.0%
500億〜1000億円3323911.7%4.2%2.7%1.8%3.0%
1000億〜5000億円456316.8%2.4%1.8%1.1%1.3%
5000億円以上237104.2%2.1%0.0%2.1%0.0%

アクティビストの大量保有(過去2年)

アクティビストが大量保有していた会社は、5社に1社(18.4%)が買収された。全上場企業の11社に1社の2.0倍。多くはファンドによる買収(6.1%)。

あり18.4%98社中18社
なし9.1%3,762社中341社

縦線は全上場企業の平均(9.3%)

買い手の型ごとの内訳を見る
社数対象対象率親会社MBOファンド事業会社
あり981818.4%2.0%5.1%6.1%5.1%
なし3,7623419.1%2.6%2.2%1.4%2.7%

差がなかった特徴

ネットキャッシュ÷時価総額

どの区分も平均とほぼ同じ(0.9〜1.2倍)で、全体では買収されやすさとの関係は見られなかった。

マイナス(借入超過)9.2%1,038社中95社
0〜25%10.5%914社中96社
25〜50%10.8%582社中63社
50%以上8.3%746社中62社

縦線は全上場企業の平均(9.3%)

買い手の型ごとの内訳を見る
社数対象対象率親会社MBOファンド事業会社
マイナス(借入超過)1,038959.2%2.6%2.2%1.2%3.0%
0〜25%9149610.5%2.6%2.7%1.6%3.4%
25〜50%5826310.8%3.3%2.6%1.9%2.9%
50%以上746628.3%2.4%2.1%1.3%2.1%

PBR(期末の株価÷1株純資産)

どの区分も平均とほぼ同じ(0.9〜1.2倍)で、全体では買収されやすさとの関係は見られなかった。ただし買い手の型ごとに見ると、ファンドによる買収ではPBR(期末の株価÷1株純資産)が1.5〜3倍の会社が2.8%(その型の平均の1.9倍)、事業会社による買収ではPBR(期末の株価÷1株純資産)が3倍以上の会社が4.2%(その型の平均の1.5倍)。

0.5倍未満8.0%599社中48社
0.5〜0.8倍8.8%703社中62社
0.8〜1倍9.6%344社中33社
1〜1.5倍10.5%507社中53社
1.5〜3倍10.6%602社中64社
3倍以上10.7%523社中56社

縦線は全上場企業の平均(9.3%)

買い手の型ごとの内訳を見る
社数対象対象率親会社MBOファンド事業会社
0.5倍未満599488.0%2.0%2.7%1.0%2.2%
0.5〜0.8倍703628.8%3.4%1.7%1.0%2.3%
0.8〜1倍344339.6%2.9%1.7%0.6%4.1%
1〜1.5倍5075310.5%3.7%2.4%1.4%3.0%
1.5〜3倍6026410.6%2.5%2.8%2.8%2.5%
3倍以上5235610.7%1.5%3.1%1.7%4.2%

役員の持株割合

どの区分も平均とほぼ同じ(0.8〜1.1倍)で、全体では買収されやすさとの関係は見られなかった。ただし買い手の型ごとに見ると、親会社による完全子会社化では役員の持株割合が1%未満の会社が4.5%(その型の平均の1.7倍)、MBO(経営陣による買収)では役員の持株割合が20%以上の会社が3.6%(その型の平均の1.6倍)。

1%未満10.5%1,540社中162社
1〜5%9.2%904社中83社
5〜20%7.0%702社中49社
20%以上9.3%700社中65社

縦線は全上場企業の平均(9.3%)

買い手の型ごとの内訳を見る
社数対象対象率親会社MBOファンド事業会社
1%未満1,54016210.5%4.5%0.9%2.1%3.0%
1〜5%904839.2%1.8%3.3%1.5%2.2%
5〜20%702497.0%1.3%2.7%0.7%2.1%
20%以上700659.3%0.7%3.6%0.9%3.9%

創業家(個人と資産管理会社)の割合

どの区分も平均とほぼ同じ(0.8〜1.1倍)で、全体では買収されやすさとの関係は見られなかった。ただし買い手の型ごとに見ると、事業会社による買収では創業家(個人と資産管理会社)の割合が50%以上の会社が5.3%(その型の平均の1.9倍)、MBO(経営陣による買収)では創業家(個人と資産管理会社)の割合が25〜50%の会社が3.8%(その型の平均の1.6倍)。

10%未満10.2%2,186社中222社
10〜25%7.7%808社中62社
25〜50%8.9%640社中57社
50%以上8.0%226社中18社

縦線は全上場企業の平均(9.3%)

買い手の型ごとの内訳を見る
社数対象対象率親会社MBOファンド事業会社
10%未満2,18622210.2%3.6%1.7%1.8%2.9%
10〜25%808627.7%1.6%2.8%1.1%1.7%
25〜50%640578.9%0.9%3.8%1.2%2.8%
50%以上226188.0%0.9%1.3%0.4%5.3%

この特徴で並べると当たるか

特徴を1つの点数にまとめ、その会社を学習に使っていないモデルで採点して確かめた(5分割の交差検証)。点数の順に10のグループに分け、それぞれ実際に買収された割合を示す。

上位10%21.8%5社に1社
上位10〜20%17.4%6社に1社
上位20〜30%14.2%7社に1社
上位30〜40%7.5%13社に1社
上位40〜50%7.8%13社に1社
上位50〜60%7.0%14社に1社
上位60〜70%6.2%16社に1社
上位70〜80%5.4%18社に1社
上位80〜90%2.8%35社に1社
上位90〜100%2.8%35社に1社

縦線は全上場企業の平均(9.3%)

AUC(0.5はでたらめ、1.0は完全に並べられる):全体0.69。買い手の型ごとに、親会社0.81・MBO0.61・ファンド0.65・事業会社0.68。親会社による完全子会社化がいちばん見分けやすく、MBOがいちばん見分けにくい。

答え合わせ:2021〜22年時点の上位30社

2021〜22年時点で点数が高かった30社のうち、6社(20%)がその後に買収された。全上場企業では9.3%。

30社すべてを見る
順位会社(2021〜22年時点)その後
1大阪製鐵株式会社5449まだ買収されていない
2インフォコム株式会社43482024年6月19日・ファンドによる買収
3サコス株式会社96412022年5月11日・親会社による完全子会社化
4株式会社セゾン情報システムズ9640まだ買収されていない
5株式会社Sharing Innovations4178まだ買収されていない
6株式会社ステムセル研究所7096まだ買収されていない
7WDBココ株式会社7079まだ買収されていない
8株式会社トラスト33472025年5月15日・親会社による完全子会社化
9株式会社まぐまぐ4059まだ買収されていない
10株式会社フォーバルテレコム9445まだ買収されていない
11コーユーレンティア株式会社7081まだ買収されていない
12株式会社BeeX4270まだ買収されていない
13鳥居薬品株式会社45512025年5月8日・事業会社による買収
14株式会社NFCホールディングス7169まだ買収されていない
15株式会社メルコホールディングス6676まだ買収されていない
16サンデン株式会社(旧会社名 サンデンホールディングス株式会社)6444まだ買収されていない
17株式会社フレクト4414まだ買収されていない
18株式会社サンデー74502026年1月9日・親会社による完全子会社化
19イオン九州株式会社2653まだ買収されていない
20グローバルセキュリティエキスパート株式会社4417まだ買収されていない
21株式会社シンシア7782まだ買収されていない
22児玉化学工業株式会社4222まだ買収されていない
23株式会社メルディアDC(旧会社名 シード平和株式会社)17392023年12月25日・事業会社による買収
24イオン北海道 株式会社7512まだ買収されていない
25GMOメディア株式会社6180まだ買収されていない
26株式会社オークネット3964まだ買収されていない
27株式会社ジャパンディスプレイ6740まだ買収されていない
28日産車体株式会社7222まだ買収されていない
29応用技術株式会社4356まだ買収されていない
30田中建設工業株式会社1450まだ買収されていない

2026年9月29日 00:48 更新