半導体

半導体:量の差は開いている

米国は2022年10月から、最先端のAIチップと製造装置を中国に売らなくなった。その効き目を、計算力の量(Nvidia の H100 何個分か)で数える。

このページの要点

  1. 新しく出荷されたAIの計算力のうち中国向けは、2023年の11%が最高で、2025年は4.7%。世界全体は急増したが、中国向けの伸びはずっと小さい。
  2. 中国向けのうち87%は国産(ファーウェイ・カンブリコン)で、1年前の57%から上がった。米国の規制で止められるのは、今では小さな部分だけ。
  3. チップ1個では、B300 は Ascend 910C の3.3倍。中国は数と電気で補い、AIのデータセンターは同じ計算に米国の約2.4倍の電気を使っている。

中国にどれだけの計算力が渡っているか

その年に出荷されたAIの計算力のうち中国向けの割合中国向け=中国の市場向けに作られたチップ(Nvidia の A800・H800・H20、AMD の MI308X)と国産チップ(ファーウェイ・カンブリコン)。
年世界中国向け割合うち国産
202230万個分8,870個分2.9%0%
2023129万個分14万個分11.2%0%
2024509万個分33万個分6.5%57%
20251,358万個分64万個分4.7%87%

単位は「H100 換算」=Nvidia の H100 何個分の計算力か。Epoch AI が決算や報道から推計した値(幅の真ん中)。中国に密輸されたチップと、中国の会社が海外で借りている計算力は入っていないので、実際の中国の割合はもう少し高い。ファーウェイは2024年から数えている。

出典:Epoch AI(AIチップの出荷)

チップ1個の差と、電気の代償

チップ計算力(H100=1)電力1kWあたりの計算力
Nvidia B300米国の最新の主力2.53倍1,400 W1.80
Huawei Ascend 910C中国の最良の国産0.76倍700 W1.09
Nvidia H20中国向けに性能を落としたもの0.15倍400 W0.37
米国の最大のAIデータセンターColossus 2111万個分 · 946 MW
中国の最大のAIデータセンターVNET Bayin Ulanqab12万個分 · 221 MW
H100 千個分あたりの電力2.3 / 0.9 MW中国/米国(Epoch AI が追っている大きなAIデータセンター)

ここで2つのボトルネックがつながる。弱いチップでも、数を増やして電気を多く使えば大きなモデルを学習できる。まさにファーウェイのやり方で、中国はその余分な電気をまかなえるが、米国は簡単にはまかなえない。それでも最大の施設どうしでは、米国は中国の約9倍の計算力を1か所に持つ。

出典:Epoch AI(AIチップの出荷) / Epoch AI(データセンター)

Nvidia と中国の市場

Nvidia はかつて中国の高性能AIチップの約95%を握っていた。2026年1月期の売上に占める中国は9.1%で、見通しには中国へのデータセンター向けの売上を入れていない。H200 は2026年に輸出が許可されたが、中国側が国産を守るため購入を絞っている(報道では200,000個未満、学習用に限る)。上の出荷の数には、中国向けの H200 はまだ出てこない。

出典:NVIDIA 10-K / TrendForce

輸出規制と中国の対応

  1. 半導体中国

    中国の工業情報化省が、ByteDance・アリババなどに Nvidia の RTX Pro 5500 の購入を認める考えを伝えたと報道(米国が輸出を認めるかは未定) Implicator「China Signals It Will Approve Nvidia RTX Pro 5500 Purchases」(2026年9月28日、The Information の報道を受けて)

  2. 半導体米中

    トランプ大統領と習主席がワシントンで会談。AIの対話の場は作るが、半導体の規制は合意なし Roll Call「AI export controls debate rages as Trump, Xi meet」(2026年9月23日)

  3. 半導体中国

    中国は H200 の輸入を20万個未満(申請の半分以下)に絞り、学習用に限る方向と報道 TrendForce

  4. 半導体米国

    米商務省「規制は中国に本社がある会社の海外の拠点にも及ぶ」 Al Jazeera「US says ban on AI chip shipments applies to Chinese firms outside China」(2026年6月1日)

  5. 半導体米国

    米商務省が約10社に H200 の輸出を許可(1社7万5千個まで) TrendForce

  6. 半導体米国

    米商務省が H200 などの審査の方針を改定。同じころ中国の税関は H200 を通さなかったと報道 米商務省 BIS「Department of Commerce Revises License Review Policy for Semiconductors Exported to China」(2026年1月13日)

  7. 半導体米国

    トランプ大統領が H200 の中国への販売を認めると発表(売上の25%を米政府へ) 米商務省 BIS「Department of Commerce Revises License Review Policy for Semiconductors Exported to China」(2026年1月13日)

  8. 半導体中国

    中国当局が大手に Nvidia の中国向けチップを買わないよう指示したと報道 Bloomberg「China Orders Firms to Stop Buying Nvidia AI Chip, FT Says」(2025年9月17日)

  9. 半導体中国

    ファーウェイの任正非氏「チップは1世代遅れているが、束ねて使えば追いつける」(人民日報) ChinaTalk「Huawei Founder on US v China and Basic Research」(人民日報 2025年6月10日のインタビューの英訳)

  10. 半導体米国

    世界中のAIチップの行き先を管理する規則(AI Diffusion Rule)を、施行の前に撤回 米商務省 BIS「Department of Commerce Announces Rescission of Biden-Era Artificial Intelligence Diffusion Rule」(2025年5月13日)

  11. 半導体米国

    中国向けの H20 にも輸出の許可が要るようになる(Nvidia は45億ドルの損失を計上) NVIDIA 10-K

  12. 半導体米国

    AI向けの高速メモリ(HBM)と製造装置の規制を追加 米商務省 BIS「Foreign-Produced Direct Product Rule Additions, and Refinements to Controls for Advanced Computing and Semiconductor Manufacturing Items」(2024年12月2日)

  13. 半導体米国

    規制を強化。Nvidia が中国向けに性能を落とした A800・H800 も売れなくなる 米商務省 BIS「Commerce Strengthens Restrictions on Advanced Computing Semiconductors」(2023年10月17日)

  14. 半導体米国

    米国がAI向けの先端半導体と製造装置の中国への輸出を規制。ここから競争の形が変わる 米商務省 産業安全保障局(BIS)「Implementation of Additional Export Controls」(2022年10月7日)

このページは情報の整理で、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。データは各公表元のもので、誤りや遅れがありえます。発言は報道・書き起こしからの要約と訳で、原文は出典をご覧ください。投資の判断はご自身で。

2026年9月29日 12:24更新・米国の電力は2026年6月まで、中国は2026年5月まで・モデルは2026年9月9日まで