当事者の発言

競争の当事者は何を言っているか

AIを作っている当事者は、詰まりに最初に気づく。その発言を「何を測ればよいか」の手がかりにして、1件ずつこのサイトのデータと突き合わせる。

このページの要点

  1. 米国の当事者は電気の話をし、中国の当事者はチップの話をする。どちらも自分の弱いところを心配している。
  2. マスク氏の「中国がAIの計算力で世界を大きく上回る」は、まだデータに出ていない(新しい計算力の中国向けは4.7%に低下)。電気の話は当たっている(中国の発電は米国の2.3倍)。
  3. フアン氏の「数ナノ秒後ろ」は実際には数か月(4.4か月)。中国の電気は「安い」より「多い」が正確。

電力について

2026年2月 · 電力

イーロン・マスクSpaceX(xAI を買収)

地上の電気ではAIの需要をまかなえない。だから宇宙で太陽の光を使う

AIの電力需要は、地上の手段では近いうちにさえまかなえない。地域や環境に負担をかけずには無理だ。

データで見るとIEA の見通しでは、米国のデータセンターの電気は2030年までに約240TWh(年に約40TWh)増える。米国の発電は直近12か月で128TWh増えただけなので、データセンターだけで増えた分の約31%を使う計算になる。

見るべき数字:米国のデータセンターの電気の増え方と、米国の発電の増え方の比べ — 電力

出典:Al Jazeera「Musk merges SpaceX and xAI firms, plans for space-based AI data centres」(2026年2月3日)

2025年11月 · 電力

サティア・ナデラマイクロソフト

困っているのはチップではなく電気。つなぐ建物が無くてチップが倉庫で眠っている

いま一番の問題は計算力が余ることではなく電気だ。つなげられないチップが在庫に積み上がっているかもしれない。チップの供給の問題ではなく、すぐ使える建物が無いのだ。

データで見ると米国の発電は直近12か月で+2.9%、中国は+5.7%。米国で詰まっているのは、電気を建物まで届けること(「すぐ使える建物」)の方。

見るべき数字:米国の発電の増え方 — 電力

出典:Tom's Hardware「Microsoft CEO says the company doesn't have enough electricity to install all the AI GPUs in its inventory」(2025年11月、BG2 ポッドキャストでの発言)

2025年5月 · 電力

サム・アルトマンOpenAI

AIの値段は、最後は電気の値段に行き着く

チップはどんどん安くなる。でも電子は電子だ。最後は、知能の値段、AIの値段は電気の値段に行き着く。

データで見るとこの通りなら、長い目では電気の多い国が勝つ。2025年に増えた発電設備は中国532GW、米国44GW。ただし中国のチップは同じ計算に約2.4倍の電気を使うので、その分だけ差は縮む。

見るべき数字:米中の電気の値段と量 — 電力

出典:Tech Policy Press「Transcript: Sam Altman Testifies At US Senate Hearing On AI Competitiveness」(2025年5月8日)

2025年4月 · 電力

エリック・シュミット元グーグル会長

AIの限界は電気。米国は2030年までに92GWの新しい発電が要る

中国はAIとエネルギーの両方が土台だと理解し、AIの研究に資源を注ぎながら、世界一の再エネと送電網を築いている。

データで見ると2025年に米国が増やした発電設備は44GWで、大半は昼しか発電しない太陽光。この速さでは2030年までに92GWは遠い。同じ年に中国は532GW増やした。

見るべき数字:米国の設備の増え方(年に何GW) — 電力

出典:Eric Schmidt の米下院エネルギー・商業委員会での証言(2025年4月9日)

2024年2月 · 電力

イーロン・マスクテスラ・xAI(当時)

足りないものは順に移る:チップ → 変圧器 → 電気

1年前に足りなかったのはチップだった。次は変圧器、その次は電気が足りなくなる。来年には、チップを動かす電気が見つからなくなるだろう。

データで見ると米国の発電は直近12か月で+2.9%(+128TWh)。予言した電気の不足は、停電ではなく「つなぐまでの待ち時間」と値上がりとして出ている(変圧器の納期と接続待ちは電化ウォッチ)。

見るべき数字:米国の発電がどれだけ増えているか — 電化ウォッチ:送電網

出典:New Atlas「Elon Musk: AI will run out of electricity and transformers in 2025」(2024年3月、Bosch Connected World での発言)

電力と半導体の両方

2026年1月 · 電力と半導体

イーロン・マスクテスラ・SpaceX・xAI

中国は電気で勝ち、いずれチップも解決して、AIの計算力で世界を大きく上回る

中国は誰よりも多くの電気を持ち、たぶんチップも多く持つ。今の流れのままなら、中国はAIの計算力で世界のほかの国を大きく上回る。人は電気を新しく用意する難しさを甘く見ている。

データで見ると電気は方向としては合っているが、3倍にはまだ届かない(2025年に中国の発電は米国の2.34倍)。計算力は今のところ逆で、世界の新しいAIの計算力のうち中国向けは2023年の11%から2025年は4.7%に下がった。

見るべき数字:中国の発電が米国の何倍か、中国向けの計算力が増えているか — 半導体

出典:Business Insider「Elon Musk says China will 'far exceed the rest of the world in AI compute'」(2026年1月7日、Moonshots with Peter Diamandis での発言)

2025年11月 · 電力と半導体

ジェンスン・フアンエヌビディア

中国は勝つ(のちに「米国の数ナノ秒後ろ」と言い直す)。中国は電気がほぼ無料

中国はAIの競争に勝つだろう。……(数時間後の声明で)以前から言っているとおり、中国はAIで米国の数ナノ秒後ろにいる。米国は先に走って、世界の開発者をつかむことが大事だ。

データで見ると「数ナノ秒」は実際には数か月:中国の最高のモデル(Kimi K3)は、米国が4.4か月前に届いた水準。電気代は、OIES によれば中国沿岸のデータセンターで1kWhあたり0.08〜0.14ドルと、米バージニア州(0.10ドル)並み。安さは地方政府の最大50%の補助から来ている。

見るべき数字:モデルの実力の差は何か月か、中国の電気は本当に安いか — AIモデル

出典:CNBC「Nvidia's Jensen Huang softens his 'China will win the AI race' remark to FT」(2025年11月6日)

2025年6月 · 電力と半導体

任正非ファーウェイ創業者

チップは1世代遅れている。だが数でまとめて(電気を多く使って)補えば、実用では追いつける

我々のチップは1つでは米国より1世代遅れている。数学で物理を補い、ムーアの法則でない方法でムーアの法則を補い、束ねた計算で1つのチップの弱さを補う。

データで見るとデータでもこのやり方とその代償が見える:中国の大きなAIのデータセンターは H100 千個分あたり約2.3MW、米国は0.9MW で、同じ計算に約2.4倍の電気を使う。束ねるやり方が成り立つのは、電気に余裕があるから。

見るべき数字:同じ計算にどれだけ電気を多く使っているか — 半導体

出典:ChinaTalk「Huawei Founder on US v China and Basic Research」(人民日報 2025年6月10日のインタビューの英訳)

半導体について

2026年1月 · 半導体

ダリオ・アモデイAnthropic

チップを作る力で米国は何年も先を行く。先端チップを中国に売るのは大きな誤り

チップを作る力では、我々は中国より何年も先を行っている。それを出荷するのは大きな誤りだ。北朝鮮に核兵器を売って自慢するようなものだ。

データで見るとチップ1個では、米国の最新(B300)は中国の最良(Ascend 910C)の3.3倍の計算をする。2025年に中国向けに出荷されたチップは合わせて H100 の64万個分、それ以外は1,294万個分。

見るべき数字:チップ1個の性能の差と、出荷された計算力の差 — 半導体

出典:Axios「Anthropic CEO on Nvidia chips to China」(2026年1月20日、ダボス会議)

2026年1月 · 半導体

林俊旸アリババ Qwen の技術責任者

3〜5年で中国の会社が米国を抜く見込みは20%未満。計算力は1〜2桁違う

米国の計算資源は1〜2桁大きい。米国は次の世代の研究に大量の計算を注いでいるが、中国は日々の需要をまかなうだけで手一杯だ。

データで見ると「1〜2桁」は10〜100倍。2026年の最大の学習の計算の量の差は50倍で、この幅に入る。新しく出荷されたAIの計算力のうち中国向けは4.7%。

見るべき数字:最大の学習の計算量の差(倍) — AIモデル

出典:South China Morning Post「China AI has 'less than 20%' chance to exceed US over next 3 to 5 years: Alibaba scientist」(2026年1月、清華大学の AGI-Next での発言)

2024年7月 · 半導体

梁文鋒DeepSeek

お金ではなく、先端チップが買えないことが問題

お金が問題だったことは一度もない。問題は先端チップの輸出禁止だ。

データで見るとその後も DeepSeek などは、米国の最先端から約4〜8か月遅れの位置を保っている。使った計算はずっと少なく、2026年の最大の学習の計算の量は米国が中国の50倍。

見るべき数字:最大の学習に使った計算の量の差 — AIモデル

出典:ChinaTalk「DeepSeek CEO interview」(36Kr の暗涌 2024年7月のインタビューの英訳)

このページは情報の整理で、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。データは各公表元のもので、誤りや遅れがありえます。発言は報道・書き起こしからの要約と訳で、原文は出典をご覧ください。投資の判断はご自身で。

2026年9月29日 12:24更新・米国の電力は2026年6月まで、中国は2026年5月まで・モデルは2026年9月9日まで